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●Section4 自己評価書の書き方

  AO入試では志望理由書を要求される場合と、自己評価書を要求される場合の二つがあります。志望理由書が「自分が何をやりたいか?」を書くとしたら、自己評価書は「自分がどういう人間であるか?」を書く文章です。 つまり、自己評価書では、自分の資質や能力のアピールをすることになります。「自分はこういう人間ですよ」ということを他人にわかってもらい、「こういう人を大学に入れたら、うちの大学に良いかもしれない」という期待を持ってもらうための文書ですね。 そのためには、志望理由書と少し違って、今までに自分はどんなことをしたか、それがどんなスキルや能力、可能性の証明になっているのか、を示す必要が出てきます。未来と言うよりは、過去にやってきたことが中心となっているわけですね。志望理由書が「未来にこういうことがやりたい」から始めて、過去に戻り、現在の志望につなげるとしたら、まず、現在の自分はこうであり、その根拠は、過去のこういう経験にあり、だから、未来・将来にはこういう期待が持てる、という進み方になるわけです

自己評価書=過去から未来につなげる 

  そのためには、二つの内容が必要になります。一つは、自分がしてきた経験の報告、もう一つはそれが持っている意味づけです。たとえば、高校の時にサッカー・クラブに属していたとします。その経験を書く方法はいろいろ考えられます。シュートを打つときが快感だったとか、県大会で決勝まで行ったとか、練習がきつかったとか、ポイントは様々です。しかし、そのどれを強調するかで意味づけは変わってきます。  たとえば、「練習がきつかった」と書くのなら、そのきつい練習を耐えてきた自分を「忍耐強い」などと意味づけることができるでしょう。でも「シュートを打つときが快感だった」と書くと、ちょっと意味づけはしにくい。「あなたが気持ちよかっただけでしょう? それが私とどういう関係があるの?」ということになってしまう。だから、経験のどこを強調して書くか、が大切になってきます。

脚色の必要性 

  経験は、じぶんのしてきたすべてを書くわけにはいきませんし、その必要もありません。適当に取捨選択して、前にも述べたように「大学の環境をよくすることかせ期待できる人間」というイメージになるようにやや誇張しなければならないからです。もちろん「誇張」とはいっても、嘘偽りを書いてはいけません。嘘にならない範囲で、どこを強調してどこを省略するか? それをうまくやることで、他人の受ける印象は大きく変わってきます。  これを「脚色」と言います。自己評価書を書く場合は、意味づけと経験のバランスを考えながら、全体をストーリーづけして、前に述べた「大学の環境をよくするような人間」という期待やイメージに沿うように、表現や内容あるいは構成を工夫していかなければならないのです。どこを強調していくかによって、ストーリーは変化していきます。極端なことを言うと、一つの経験からまったく違ったストーリーを作ることもできるのです。

経験を意味づけすると、さまざまなストーリーが出てくる 

  下の例では、高校の時のクラブ活動が書いてあるのですが、太字の部分が意味づけになっていて、他の部分が経験の報告になっています。両方が一組になって、「私」の性格や能力をアピールしている仕組みになっていることがわかるでしょうか?

(例)

 私は自分の自己管理能力には自信がある。これは、学校の部活動で養われたものだ。私は、小学校から高校卒業まで、バスケットボール部に所属し、一日も休まず練習に参加していた。バスケットボールは、テクニックだけでなく、チームワークが大切だ。けがなどで一人でも休んでしまうと、大きく戦力がダウンする。特にレギュラーだった私は、欠場すると皆に大きな迷惑をかけてしまう。そのため、自然と健康には心を配った。おかげで、小学校3年生から高校卒業まで一度も学校を休んだことはない。

 一方でバスケットボールは、私の人間関係にもよい影響を及ぼした。試合中は、ちょっとした動作からメンバーの意図を読みとって、協力して行動しなければならない。冷静に状況を読んで、素早く行動する。失敗したときには、後から十分に話し合って、不十分だった点を分析する。このような密な集団行動を経験することは、私のコミュニケーション能力を高めたと思う。学級委員として活動できたのも、この経験から得たものが大きいだろう。

能力と経験の組み合わせ 

 自分の持つ可能性・スキル・能力が本当なら、それを裏付ける体験や経験が必ずあるはずです。例にあるような「自己管理能力」なら、体調の悪化など、さまざまな危機があっても、自分で工夫しながらを乗り越えてきた、というようなストーリーに当然なるはずです。そういう部分を、自分の体験・経験から見つけ出して説明していく必要があるでしょう。

  自己評価書は、このように体験と可能性・能力のカップリングで書かれます。この組み合わせがうまく出来そうな要素を選び出してこなくてはいけません。可能性・能力をいかに高く書いても、それに対応する体験・経験がなかったら、説得力がありません。だから、最初に考えるべきは、そういう組み合わせが自分の中に見つかるか、ということですね。

  細かい書き方については、一人一人の癖があるので、添削で細かく指導されるでしょうが、自己評価書も自分のしてきたことを、ただ並べて書くだけではなく、いろいろ工夫して、「大学側が期待できるような資質や能力を持っている人間」というイメージに整理されなければならないことがおわかりだと思います。