5-C ヴィジュアル系の出題


a  ヴィジュアル系も同じやり方で
b  文章構成の仕組み
c  ヴィジュアル系は要約がポイント


ヴィジュアル系も同じやり方で


最近は、ヴィジュアル系の出題も増えているね。

えっ、何ですか、それ? 出題者が美男だとか、化粧しているとか、そんなわけないか…

図表とか、絵や漫画などが出題されるわけだね。

やっぱり、そんな程度ですか、がっかり。

図表問題はPART2で本格的に扱うとことになる。ここでは漫画による出題を取り上げてみよう。

えーっ、こんなのが大学受験に出題されたんですか?

まあ、4コマ漫画としては内容が古すぎる感じだけどね。大学が漫画を取り上げるのだから、はかたがないかも。さて、これをどう処理したらいいか?

前と同じやり方でできるんですか?

模範解答を分析する

まあ、そうだね。ちょっと模範解答のチェックをしてみようか? それが分かると、書き方は自然に分かってくるよ。数字は段落番号になっている。

1 この漫画では、夫婦間の会話は極端に貧しい。夫は「めし」「ふろ」「ねる」の三語しか発しない。それらは「食事をくれ」「風呂にお湯を入れろ」「寝るから布団を敷け」などの要求になっている。妻の方も「おかえりなさい」という言葉以外は無言で対応する。しかし、この二人はそれなりにうまくいっているようだ。妻は夫の乏しい言葉を臨機応変に解釈するからだ。「めし」「ふろ」「ねる」の連続は、息子の成績への文句だと妻には聞こえ、それに言い返すと、夫の方でも「めし」「ふろ」「ねる」で反論する。きっとこの口論は「めし」「ふろ」「ねる」で決着するのだろう。

最初の段落が要約 2 このような単純な言葉でもコミュニケーションが成立するという滑稽な状況は、家庭の人間関係が固定化しているのが原因だろう。夫は外に働きに行き、妻が家で家事をするというように、行動がパターン化している。その結果、コミュニケーションも幅が狭くなる。このような家族は、人間の修理工場にたとえられる。。夫が故障なく働くように、妻がエネルギー補給をする。また子どもを教育して、将来夫が壊れても、変わりがきくようにする。家庭の日常はその過程を円滑に維持することだ。当然少ない言葉でも十分用は足りる。このような日本の家族は、言葉が貧しくとも、そうした機能には優れているとも言える。
3 ただこのような家族生活のスタイルは、女性が社会に進出することで崩れつつある。女性は、もはや男性のメインテナンスを担当しなくなり、個人個人が各自の責任で修繕と補給を行う生活様式に変わりつつある。一方で、この家族の生活様式はあまりにも仕事中心に組織されていて、生きる楽しみや人間的余裕などの要素が少ない。作者の視線は、従来の日本の家族像を温かく見守ると同時に、その欠点も見逃していない。


なーるほどね、これならヴィジュアル系もいちころですね。

 文章構成の仕組み


おや、わかりが速いね。じゃあ、この文章の仕組みを説明してもらおうか?

ええと、まず最初の段落が「要約」になってます。とくに最初の6コマですね。夫が「めし」「ふろ」「ねる」の三語しか発しないことを指摘して、それを夫からの要求と意味づけています。

なかなかいい分析だね。

同じ段落で、妻についても「無言で対応する」とはっきり書いていますね。これがとくに1,4コマ目の要約ですね。

ふむふむ。その後はどうなっているかな?

でも「それなりにうまくいっている」とまとめてあります。をする前に、第二段落で「家庭の人間関係が固定化している」と抽象化してまとめていて、それを「夫は外に働きに行き、妻が家で家事をする。行動がパターン化しているため、対人コミュニケーションも幅が狭くなる」とくわしく説明しています。

3,4コマ目の要約はその後に行っているわけだね。

ええ、「乏しい言葉でもそれなりに意思は通じている」とその後に続いていますね。ここまでの構造は

1,2コマ目の要約⇒まとめと説明⇒3,4コマ目の要約

となっていますね。

ブラボー! ずいぶん人の文章が読めるようになったね。

そりゃあ、先生に少し鍛えられましたから。でもその後がどうなっているのか、イマイチわかりにくいんですけど…

後半の流れ―矛盾から提案へ

第三段落と第四段落は、矛盾の提出だね。第三段落では、このような日本の家族の肯定面、つまり人間の再生産には機能的であることを指摘する。それに対して第四段落では、その否定面、つまり生きる楽しみや人間性の面が少ないこと、を指摘している。
 以上を総合判断してラストに提案がある。「人間的に幅を持つ場所でありたい」がその内容。つまり第三段落と第四段落は

肯定+否定(矛盾)⇒提案


となっている。

最後はずいぶん簡単ですね。理由とか例示とか、今までに小論文に絶対必要だった要素がありませんね。なくていいんですか?

ヴィジュアル系は要約がポイント


本当は入れた方がいいだろうね。漫画だけで十分イメージは伝えられているから、これ以上なくてもいい

「人間関係が固定化している」と、なぜ言えるのかという理由も必要だと思うけど…

これは次の週で説明するけど、この部分は、この漫画をそのように考えるとある程度つじつまが合う、ということで十分なんだ。いわば可能な解釈をたてればいい。

けっきょく、この解答は、漫画という視覚的イメージを言葉に直すという作業に中心があるんですね。

漫画じゃあまり言葉が書いていないからね。感覚的に分かったつもりでも、どういうことなのか説明して見ろと言われると、けっこう難しいだろう。こういう設問は、まずヴィジュアルイメージを言葉に直すことを要求している。そのことを覚えておいた方がいいね。


 今週の講義のポイントをまとめてみました。内容を思い出しながらもう一度復習してみよう。意味が理解できないときは説明文に戻って読み返してみよう。
 納得できたら、さあ、今週の課題 (Homework) に挑戦!

A
図表は必ず言葉でストーリー化する
細かい変化は無視⇒おおざっぱなトレンドを書く
棒グラフは対比、折れ線グラフは時間の変化

B
表は、比較的単純なトレンド にする
表現の意図を推理する

C
図表問題の処理=読解+解釈+提案・批判
解釈⇒真の原因や社会的背景を考える
既存の社会や時代の知識と関係させる






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