2-A 細部の注意
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a 表記の問題点
b 段落と書き出し
c 接続詞の問題
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表記の問題点
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■さて先週は初めて課題を送ってもらったわけだけど、けっこう表記上の間違いが多かったね。
●誤字・脱字とかですか?
■それも多かったけど、ある程度仕方ないよ。漢字はひとつひとつ覚えていくほかない。直せって言ってもすぐ直るというものでもないんだ。
●よかった。私、漢字って苦手なんですよ。漢字トラウマというか…
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行頭にテン・マルを入れない |
行頭のテン・マルの扱い
■それより、行の頭の所にテン・マルを入れる人が相変わらず多かった。これはすぐ直さなきゃね。
●原稿用紙の使い方の基本なんだもんね、エヘン。
■エラソーに言っているけど、君の書いた文章にもあったよ。
●あれ、そーですか? でもときどき迷っちゃうことはあるんですよね。現代文の問題なんかで100字以内で書け、なんてあるでしょう。そういう場合 はテン・マルも一字分で数えるんですよね。
■そうだよ。
●そういう時、テン・マルが行の頭に来たらどうなるんですか?
■そのまま行の頭に書くね。
●その区別はどうするんですか?
■200字くらいの制限字数なら、行頭にテン・マルを入れた方がいい。それ以上だと段落に区切るから、行頭にテン・マルは入れない、って感じかな。
「私は〜思う」「〜というもの」はいらない
■他に大切なのは、簡潔な文章を書くと言うことだ。
●短い文章ですか?
■簡潔な文章とは、無駄なことが書いてなくて、わかりやすい文章だよ。
●どんなことが無駄なんですか?
■一番無駄なのが「私は〜と思う(考える)」という表現だよ。
●えー、何でー? 何で使っちゃいけないの?
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「私は〜思う」は無駄な表現 |
■だって小論文に書いてほしいことは、基本的に自分の考えに決まっているじゃないか。他の教科みたいに、既存の考えを記憶することが大切じゃないんだ。わざわざ「私は〜と思う」なんて書かなくても分かるだろう。
●自分の考えだから「私は〜と思う」書いた方がいいのかと思っていたのに。
■小論文は字数が少ないから、分かり切っていることは省いた方がいいね。大切なのは、中身がきちんと表現されているということだ。
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それから、このごろイライラするのが「〜というもの」という表現だ。「資源というものは、安定的に供給されなければならない」なんてね。
●これもダメなんですか? なんかかっこいい感じがするけど。
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■「〜というもの」をつけると、断定する感じが少し和らぐのだろうね。だからついつけたくなるのだろうけど、たいてい文章を曖昧にするだけに終わってしまう。
「資源は安定的に供給されねばならない」とした方が明確だ。「〜というもの」をつけた分だけ文章も長くなるし、意味も曖昧になる。
比喩は小論文に向かない
■それから特別な表現も避けた方がいいね。たとえば比喩や修辞疑問文など。
●比喩って?
■「まるで〜のようだ」なんて表現さ。
●ダメなんですか?
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比喩は文学的になりすぎる |
■まるっきりダメというわけではないけど、避けた方がいいね。比喩を多用すると、どちらかといえば文学的な文章になって、論理的文章の感じにならないんだ。
●私の個性はどこで見せるんですか?
■個性は文体じゃなくて、中味つまり書いてある内容で出すのさ。
●うーむ、そーだったんですかー。かっこいい名文を書いてやろうと思ったのに。
■それがいけないんだ。小論文は無個性な表現でもいいから、わかりやすく書かなくてはね。文学じゃないんだからさ。
修辞疑問はつい証明を忘れる
●ところで修辞疑問文ってのは?あまり聞いたことがない言葉なんですけど。
■よく自分の主張したいことを「〜ではなかろうか」なんて、わざと疑問の形にすることがあるだろう。
●わーお、それもいけないんですか?
■絶対ダメっていうわけじゃないけどさ、感心しないね。
●どうして?
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修辞疑問は論証がおろそかになりやすい |
■これは読者への呼びかけをすることで、強調する方法なのだけど「原発は必要ではなかろうか」と書くと、それだけでつい読者が同意してくれたように錯覚して、証明を忘れてしまうことが多い。初歩の場合に多い間違いだから、小論文を書き慣れない人は絶対にやめた方がいい。
●そういえば自信がないときは、「〜じゃないだろうか」って書いてごまかしたいって気持ちが働くみたい。
カギカッコの使い方
■さらにもう一つ! カギカッコはむやみやたらに使わない。
●強調したいときはどうするんですか?
■ちょっと待った。カギカッコはふつう強調には使わないよ。
●そんな馬鹿な! 学校で強調の時につけるって習いましたよ。
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カギカッコは「いわゆる」の意味 |
■そんな簡単な方法では、強調なんてできないよ。文章でカギカッコをつける場合は「いわゆる」の意味か、特別な意味をくっつけたい場合に限る。
●どういうことですか?
■たとえば「未開」民族と書くと、世間では未開と呼んでいるけど、私はそうは思わない、むしろ文明的にもすぐれた民族だと思う、という意味が裏にくっついてしまうんだ。
●複雑!
■学校の国語では、こういう細かなニュアンスをちゃんと説明してくれないみたいだね。
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段落と書き出し
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●ところで、私、段落をどう切るかについて、いつも迷うんですけど。「段落を切りすぎる」といつも言われて…でも、どうやって「ここで段落を切るんだ」って決めればいいんですか?
■これは次のsectionでくわしくやるテーマだけど、とりあえず説明しとこうか。段落っていったい何だろうか?
●また意地悪を言う。そのフレーズ、この前も言っていませんでした?
■意地悪じゃないよ。段落がどんなものか分からなければ、切りようがないだろう。
●「段落は意味のまとまりだ」って学校では教わりましたけど…
■「まとまり」って何だい?
●えー、何か似たようなことが書いてあるとか…
■どうして似ているんだろう? 何が似ているんだろう?
●わかんないよ、もー。いじめないでくださいよー。
■一つの考え方としては、先週やった基本構造
●ところで、私、段落をどう切るかについて、いつも迷うんですけど。「段落を切りすぎる」といつも言われて…でも、どうやって「ここで段落を切るんだ」って決めればいいんですか?
■これは次のsectionでくわしくやるテーマだけど、とりあえず説明しとこうか。段落っていったい何だろうか?
●また意地悪を言う。そのフレーズ、この前も言っていませんでした?
■意地悪じゃないよ。段落がどんなものか分からなければ、切りようがないだろう。
●「段落は意味のまとまりだ」って学校では教わりましたけど…
■「まとまり」って何だい?
●えー、何か似たようなことが書いてあるとか…
■どうして似ているんだろう? 何が似ているんだろう?
●わかんないよ、もー。いじめないでくださいよー。
■一つの考え方としては、先週やった基本構造
問題⇒解決⇒理由説明⇒証拠
のひとつひとつで切る、というやり方があるよね。
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段落は構造から切っていく
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●そうか! 文章中での働きの違いで切るわけですね。
■そうそう、分かりが早いじゃないか。
●そうすると、四段落ってわけか。でも、そしたらこの前の例題なんかは最初の段落が一行になってしまいますね。「原子力発電所は必要である(建設すべきでない)。」が解決でしたよね。
■段落が一行だけっていうのは、あまり好ましくないね。そういう場合は、前に何か文をくっつけて、複数の文にするといいね。
●「前に何か文をくっつけ」るって、どんな文をつけるんですか?
イントロの作り方
■たとえば「最近原子力施設での事故が続いた。そのせいもあって、市民の間で原発の安全性に対する不安が広がっている。しかし原発は基本的に必要な施設である。」なんてね。そうすれば複数の文になって段落として独立できる。
●なーるほど。
■一般的に言って、初めにくっつける文は、自分の書きたい解決と反対の内容の方が書きやすいね。たとえば原発に反対なら「最近政府によって原発の安全性が広く宣伝されている。しかしこれ以上原子力発電所を建設するのは間違っている。」とかね。そうすると世の中の流れに逆らって、自分独自の見解を出したような感じがするだろう。
●わざと敵をつくるって感じですか?
■そういうわけじゃないけど、わざわざ自分の意見を言うのは、常識や通説が間違っているからだろう。だから、最初に世間の通説を書いておいて、それを自分の意見で否定する形を取った方がいいんだ。その方が、明確な意見として見える。
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自分の考えと反対の内容から文章を始める
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●世間に逆らわなきゃ、自分の意見を言えないんですか?
■そうだと思うね。世間の常識に賛成なら、何も意見など言わなくてもうまくいっているわけだろう。どっかおかしいと思うからこそ「こう考えるべきだ」と主張するのじゃないかな?
●小論文書くのも、けっこうエネルギーがいりそうですね。
■でもこんな風に気張らないで、「なぜなら…」の理由の文まで入れて一段落にしてもいいね。その場合、残りはどうなるか、考えてごらん。
●第二段落は理由のくわしい説明の部分にすればいいし、第三段落は「たとえば」で始まる例示の部分で、三段落構成となりますね。
■そのとおり。こんな風に区切ると、だいたい600字なら3段落、800字なら4段落くらいになることが多いんだ。
●それを早く言ってくれればいいのに。
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接続詞の問題
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■そして! 最大の問題は「そして」という接続詞をを使わないこと。
●えー、なんでですか?私いっぱい使っちゃうけどな。次に文を続けたいときに「そして」を使っておけば、とりあえずつながるし、便利じゃないですか。
■それがいけないんだ。「そして」を使うと、文と文とのつながりが曖昧なってしまう。「そして」はふつう順接といわれるけど、前文の内容と後文の内容が全く同じだということではないよね。かといって前文と後文の内容が反対だということも表さない。要するに、曖昧なんだね。次の例を見てみよう。どこが違うかな?
雨が降っていた。そして私は悲しかった。
雨が降っていた。だから私は悲しかった。
雨が降っていた。しかし私は悲しかった。
●二番目では、筆者が雨が嫌いなのね。三番目なら、雨が降るのを待ち望んでいた。でも、何か別なことが起こって、悲しくなったのね。一番目は、雨が降って悲しいという感じ。
■一番目と二番目はどこが違うんだい?
●二番目は雨が降ることが、悲しみの原因なのね。一番目は何か別に原因があるのかもしれない。
■じゃあ一番目の雨と悲しみの関係は?
●はっきりわかんないですね。関係あるのか、ないのか。
■そこが問題なんだよ。「そして」を使うと、急に意味内容が曖昧になって、気分的なつながりだけになってしまう。これは、論理的文章としては致命的欠陥だね。「そして」は小論文では避けた方がいい。
●気をつけなきゃいけないですね。
■「そして」ほどじゃないけど「また」もできれば避ける。
●これも曖昧になっちゃうからですか?
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「また」は論点が分散する |
■というより、「また」は付け加えの接続詞だから、何度も連発すると、どこが一番大切なところなのか分からなくなっちゃうんだね。
●気をつけることばっかりで、大変ですね。憂鬱になっちゃったな。
■まあ、こういうことは何回か添削されているうちに、自然に身に付いてくることだから。最初から気にしすぎるのもよくないんだけどね。
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べからず集―小論文で書いてはいけない表現
1 行頭に句読点をつけない
2 段落を適当に切る
3「私は〜と思う」は使わない
4 修辞疑問文・比喩表現は使わない
5 「〜というもの」表現は避ける
6 カギカッコは強調ではない
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