「公務員論文試験」対応コースweek2
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表現力の問題 | |||||
論文を書くときに、文章表現力は大きな要素となる。この項では、表現力を飛躍的にのばすいくつかのコツを説明しよう。 まず表現力は、日本語を操る力である。と言っても特別な才能は必要ない。言いたいことを、正確かつシンプルに書ければよい。個性は内容で出せばいいので、文体で出す必要はない。「…のようだ」などという比喩表現を好む人がいるが、論文ではやめておこう。あいまいになる危険があるからだ。文章が得意だと思っている人に限って、論文はうまく書けないことが多い。 表現力=個性的文体でなくてよい、個性は内容で出す |
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段落の基本の組み立て方 | 明確な文章を書くには、段落の組み立て方がとくに大切だ。原則はポイント・ファースト。つまり、一番言いたいことを、段落の最初に置く。その後に、最初の文をくわしくわかりやすく具体的に言い換えた文を付け加える。読み手としては、なるべくはやく筆者の言いたいことを知った方が読みやすいからだ。つまり |
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という順番である。 たとえば、原子力発電所の発電の是非という問題に対しては、次のような構成が考えられる。このように分けると、読者はまず全体像を思い浮かべ、それから細かな情報に触れていくので、理解しやすくなる。 |
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概論と細部の説明に分ける | しかし、これでは文章の全体が一段落になってしまう。主張と理由、説明だけでも三文になって一つの段落の長さとしては十分なので、実例の所だけを第二段落として独立させた方がよいだろう。第一段落と同じように第二段落をポイントとサポートに分けると、次のような構成になる。 |
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これも第一文のポイントが、実例全体のおおざっぱなまとめになっており、サポートの部分がそのくわしい説明になっている。つまり 概論⇒細部の説明 という順番になっているのだ。 ポイント=概論、サポート=細部の説明 |
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論と例の一致 | しかも、この細部の説明では 人的被害⇒環境への影響⇒経済的損害 の順番で説明されていて、この順番は第一段落における説明の順番と同じである。このように、実例の叙述の順序はその前にある理論的な説明と順序を同じにしなければならない。これを「論と例の一致」と呼び、分かりやすい文章を書くためには必ずと言っていいほど守らねばならない。 実例の順番は、論理的説明の順番と一致させる しかし実際には、この順序では書きにくいことが多い。人間が文章を書くときは、まずイメージから浮かび、抽象的なロジックは後から出てくる場合が多いからである。したがって、実例を書くときは、まずざっと下書きを書いて全体像をつかんでから、それを抽象的にまとめて書く方が書きやすい。つまり段落の最後に書いてある文を、一番前に置くとすっきりまとめられることが多い。 |
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その他の表現上の注意 | 最後に、ポイント・サポート以外の表現上の注意について列挙しておこう。これらの注意を守れば、客観的で論文的な文章を書くことができる。逆にこれらを守らないと、感想文やエッセイなど主観的な文体になりやすいので注意する。 1 「私は…思う(考える)」は不必要 2 「…ではないだろうか」などの修辞疑問文は使わない 3 「…というもの」という表現は避ける 4 「正義」など、強調としてのカギカッコは使わない 5 「とても」「非常に」などの強調語は効果が薄い 6 「だ・である」調の断定表現を基本に書く 7 段落に分ける。目安は800字で3〜4段落、1200字で4〜6段落くらい。 |
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論文試験の代表的書き方 | 以上のような原則を元に、公務員論文試験の代表的な答案構成を考えると、次のようになる。 1 題名を定義する=深く考察する 2 そこにある問題(疑問・対立・矛盾)を指摘する 3 その問題の解決(自分の意見・主張)を提示する 4 根拠(理由・説明・実例)を提示する 5 反対意見に触れ、それを批判する 6 自分の主張を再度提示する |
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定義から問題提起へ | 1は問題提起をするまでの序論の部分である。題名型の設問では、問題が「…かどうか」という選択や対立のハッキリした形で書いていないので、そういう形に再構成しなければならない。そのような形に持ってくるには、出された題名を根本的に考察して、そこに潜む疑問・対立・矛盾を見つけだす必要がある。それが「定義」の部分である。「定義」とは、その言葉の本質的意味である。定義しようとする中で、そのような問題に出会う確率は大きい。 言葉の定義を通して、疑問・対立・矛盾を見つけだす たとえば「地方自治」という言葉では、「住民自治」と「団体自治」がその本来の主旨である。(「頻出テーマのまとめ方」p120参照)ところが、実際には中央政府の権限が強大すぎて、地方政府には決定権が少ない。つまり団体自治が実現されず、そのために住民が自分の生活環境を自己決定できず、「地方自治」の本来の趣旨に反する、これは変えなくてはならないなどと考えを進めることができる。したがって、題名が出されたときに、その言葉の本来の意味を考えることは、問題を見つけだすための重要な手がかりになる。 |
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反対意見とその批判 | 5は、特に意見の対立が見られる問題については書いた方がよい。たとえば、前述した原子力発電所の建設についての文章では、ただ反対の意見を述べ、根拠を出せばよいのではない。その後に、相手の意見を採り上げ、それを批判することを通じて、自分の意見の正しさを確認する必要がある。たとえば |
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このように反対意見を取り上げてそれを批判することで、自分の意見・主張の正しさは増してくる。政治や行政に関わる問題は、するどく意見が対立している場合が多い。時間とスペースが許す限り、反対意見を取り上げ、それを検討して批判するという方法を採りたい。 |
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結論の書き方 | 6は結論である。よく結論をどう書いていいのかと悩む人がいるが、原則は「新しい内容を書かず、前に述べた内容の表現を変えて繰り返す」である。たとえば、原発についての文章では、「批判」の最後の文が「結論」になっている。「環境や人間に与える危険を考えれば、原発よりむしろこれらのエネルギー源を開発すべきだろう」は、原発に反対という意見の再度の確認であり、どこも変わっていない。ただ、そこに「代替エネルギー」という視点が加わっているだけである。これも、前で触れてある話題である。 結論=前に述べた内容を、表現を変えて繰り返す |
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