「公務員論文試験」対応コースweek1
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論文の基本構造 | |
形式と傾向 | 公務員試験の論文試験は、「あなたの考える地方分権」などのように、その大部分が一行問題と言われるタイトル中心の形式で出題されている。字数は800〜2000字程度、時間は90分のところが多い。字数に比して、書く時間はかなり短い。この形式の文章を書き慣れていないと、あわててしまってよい文章が書けないだろう。 ほとんどが題名型の問題 |
時代に敏感な出題 | 論文のテーマは、時代に応じた話題が好まれる。つい最近までよく出されていた「情報化」は、ITバブルの崩壊とともに少しずつ少なくなり、その代わりに「労働実態の推移」「男女共同参画社会」などが出題されるようになってきた。充実した論文を書くには、このような話題についてある程度の知識が必要である。その年に話題になった事件などについては、要因・影響などをチェックしておくことが大切である。新聞・ニュース番組などで最新の情報を仕入れておかねばならないだろう。 時代に即応したテーマが好まれる |
論文の評価と書き方のコツ | 論文は、次の四つの要素で評価されることが多い。この項では、1-3の要素について説明しよう。 1 知識・理解力 2 発想力 3 構成力 4 表現力(week2) |
1 知識・理解力 | 知識・理解力は、その分野についての必要な知識をきちんと持っているかどうかが評価される。とくに公務員試験の場合は、ほとんどの出題が題名型なので、その言葉を聞いただけで、どのような問題なのか、それに対する代表的な意見は何か、よく挙げられる実例・データは何か、などが瞬時にして出てくるようでなければ、合格はおぼつかない。 たとえば「地方分権」というテーマが出題されたら、なぜ今「地方分権」が必要とされるのか、その社会的背景や歴史を知っていることは、重要なポイントだ。「機関委任事務」などというキーワードも入れたい。さらに、その反対概念である「中央集権」と比較して、どんな利点や特徴を持っているかも知っていなければならない。ある程度の知識量がないと、十分な内容と説得力のある提案もできない。そのためには、「地方分権」というテーマについての、ある程度つっこんだ知識が必要である。 |
背景知識をアピール | このような形式の問題の場合は、題名以外には何にもヒントがないので、ある程度の量の知識を記憶していることが必須の条件となる。その知識がいい加減だったり間違っていたりすると、どんなに名文を書いても評価は低くなる。その意味で「頻出テーマ」を研究しておくのは、大事な作業となる。「頻出テーマのまとめ方」の需要が高まっているのも当然である。 知識量が決めて=頻出テーマの研究が必須 |
2 発想力 | しかし、知識がたくさんあるだけでは論文は書けない。なぜなら、論文とは説明文と違って、既存の知識の整理ではなく、自分の意見を表明する文だからだ。しかも、その意見は平凡・陳腐であってはならない。他の人とどこか違った「個性的」「独創的」な内容が大切だ。発想力=アイディアを出す力である。 論文=自分の個性的な意見・主張を示す文章 |
個性的とはどういうことか? | 一般的に言って、個性とは「他人と違っていること」を指す。だから、誰かがどこかで言っていることをそのまま引き写して、自分の意見にするのは感心しない。人が言わないような考えを書いてあるから、「個性的」と評価されるのだ。 ただし、人と違っていれば何でもよいわけではない。「高齢者に席を譲るべきだ」という常識に対して「高齢者を優遇する必要はない」と主張したところで「個性的だ」とは言われないだろう。なぜなら、「高齢者を優遇する必要はない」は常識的な主張をひっくり返しただけであり、そのくらいの内容なら誰でも思いつくからである。常識の反対だけでは「個性」ではなく「反抗」にすぎない。もちろん公務員志望の場合は、反社会的なユニークさというのでは話にならない。 |
代表的な意見を知る | 「個性的」「独創的」な文章は、誰とも似ていない主張をするのだから、その問題についての代表的な意見をよく知っており、あえて、そのどれにも当てはまらないような意見を書くという方法をとるべきである。いくつかの代表的な考え方の隙間を縫って、社会や地域に貢献できる自分独自の面白い意見を主張する、というのが理想である。 個性的な主張は、代表的な意見の隙間にある |
明確に一つの立場をとる | 面白さと同時に大切なのが、明確さだ。論文は基本的に自分の意見を人に理解させるための文章である。どういうことを主張したいのか、自分の立場がハッキリしないものはよくない。たとえば、「この問題については、論議をもっと深める必要がある」などと書く人がいるが、基本的にこのような書き方をしてはいけない。なぜなら、これでは「あなた」の立場が明確でないからだ。問題に対して「私はこういう立場なのだ」と明確に宣言する必要がある。 |
断定の形が基本 | ただ、この場合「私は…思う(考える)」などの表現を使う必要はほとんどない。自分が思った(考えた)結果だけを、断定の形で表現するのが基本である。たとえば「地方分権は、さらに推進すべきである」などの表現である。これを「地方分権については多様な考え方があるようだ」とか「地方分権は、さらに推進すべきだと思う」などとすると、とたんに立場が不明確になってしまう。 |
面白さとのかねあい | しかし明確さと面白さは、しばしば矛盾する。たとえば常識的な主張をすれば、たしかに明確にはなるが面白さはなくなる。逆に面白さをねらうと何を言いたいのか一貫性がなくなり、支離滅裂になるというのはよく見られる現象である。論文試験は限られた時間の中で書くので、このかねあいが難しい。なるべく面白くかつ明確な主張というバランスを大事にしたい。そのためにも、代表的な意見・主張を読んでおいて、そのポイントがどこにあるか理解しておかなければならない。代表的な意見・主張を自分の意見の述べ方のモデルとして使えるようにするのである。 |
3 構成力 | 論文は「自己の意見の表明」ではあるが、「自己表現」とは違う。むしろ、それは他人のための文章である。自分の意見をなるべく分かりやすく並べて、他人が納得しやすいように工夫する必要がある。これが、「論文の構成力」と言われるものである。 |
問題の構成 | 論文を構成する場合になくてはならない要素は「問題」と「解決」である。問題とは、自分があつかう題目の中に存在する「疑問」「対立」「矛盾」である。「疑問」は「どうしてか?」「どういうことか?」などの疑いや問いである。「対立」は「ある人は…である。それに対して…である」という反対の意見が並立している場合。「矛盾」は「…であるはずなのに、…となってしまった」という食い違いである。 たとえば「地方分権」についても、それをどう実現するか、あるいは国と地方の分担をどうするのか、については意見の違いがあるのが普通である。地方としてはなるべく多くの権限を国から移譲してもらいたいだろうし、逆に国としては地方にそれだけの行政能力があるのか、不安に思うだろう。したがって、当然どこまで権限移譲をするかについて、対立した意見が出てくる。この対立を何とか解決しなければ、「地方分権」は進まないだろう。 問題は「疑問」「対立」「矛盾」を見つけること |
解決=自分の意見 | 問題がハッキリしたら、それに対する解決が必要になる。ここが自分の意見の主要な部分である。前述したように、問題に対して自分なりの立場を表明する。ここがなければ論文と呼ぶことはできない。よく客観的であろうと意識しすぎて、一つの立場と反対の立場を並立して終わってしまう人がいるが、注意しなければならない。 なるべく早い段階で自分の扱う問題を明記すること、それに対して一定の立場に基づく解決、つまり自分の主張を提示する。この二つが論文の基本構造である。つまり 問題⇒解決(主張) というスタイルをとるのだ。 論文の根本構造=問題と解決 |
根拠で正しさを示す | しかし、この二つがあるだけでは、感想文にはなっても論文にならない。論文では、必ず自分の解決 (主張)を支える根拠を書いて、その解決 (主張)が正しいことを読者に証明してみせなければならない。論文とは、根拠を出すことで自分の正しさを明示する文章なのである。 |
理由と実例 | さて、根拠には大きく分けて、理由 (説明)と証拠 (実例)の二つがある。理屈として主張が正しいことを説明する部分と、実際に自分の主張していることが存在することを示す部分である。理屈が正しいだけでは読者はなかなか納得しない。具体例があってはじめて、感覚的にも納得できる。つまり読者を全面的に納得させるには 根拠=理由+証拠(実例) という構造が必要になるのだ。全体としては 問題⇒解決 (主張)⇒理由⇒証拠 (実例) という四段構成が基本になる。この四つの部分をちゃんと書くことが、よい構成の条件だ。 論文の基本構造=問題+解決+根拠 根拠=理由+説明+実例 論文を書く場合は、自分が今どの部分を書いているか、いつも意識して、必要な部分をとばさないように気をつけなければならない。 |
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