9-A 設問形式と解法


a  短文テーマ型
b  課題文読解型
c  資料分析型!



先週までで、ずいぶんいろいろなことを勉強した感じがします。でもいろいろやったおかげで、どれがどれだかちょっと混乱しちゃって…
 とくに先週は大変でした。グラフから突然文章題に行くんだもの。グラフ問題はこう解く、文章題はこう解く、と考えていたら方向が違っちゃったから、あれーって思って。先生が講義してくれたときは、ああなるほどって一応思ったんだけど、後で思い返してみると、ゴチャついちゃって…

解法を設問の型によって分類する よし、分かった。今週は今までのまとめで行こう。

そうしていただければ助かりまーす。

小論文の問題は、その設問形式によって処理方法が決まってくる、と言っていい。その代表的なタイプは次の三つだ。

1 短文テーマ型
2 課題文読解型
3 資料分析型

それぞれを順に復習してみよう。

短文テーマ型


このうち1 の短文テーマ型は、簡単に言うと、はじめから書くべき問題が設問の中に表れているパターンだ。たとえば

 
現在、ほとんどの大学で、学部・学科を問わず、英語の入学試験が行われています。ところが最近、実社会では役に立たない受験英語が英語嫌いを生んでいるなどの批判にこたえる事などを根拠に、大学入試での英語の試験をやめようという提案が各方面でなされています。この問題についてあなたの意見を600字〜800字で書きなさい。


などという設問だ。このような設問を出されて場合、我々はどういう問題をたてるべきだろうか?

当然、大学入試での英語の試験を続けるべきかどうか、ですよね。

そのとおり。つまり解決すべき問題が一目瞭然というタイプだ。

こういう場合は、イエスかノーかを選んで、その根拠を書くんでしたよね。

そうだね。当然のことながら、短文テーマ型では、問題とその解決の所では自分の個性を出すわけにはいかない。なぜなら

1 解決すべき問題が初めから明瞭で
     2 自分の意見はイエスかノーかどちらかを選び
    3 後は根拠の部分を充実させればいい

からだ。

中心は根拠の部分と言うことですね。

そう。問題も初めから決まっているし、解決もイエスかノーかだから、自分らしさを発揮すべき余地がないし、個性を主張するなら根拠の部分だね。ここをいちばん頑張って書くべきだ。理由を必ず出し、説明を十分にし、例示を忘れずに。

わかりました。それ、ほとんど「耳たこ」状態です。

 課題文読解型


さて、次の課題文読解型だけど、これは、ある筆者が書いた長い文章があって「これを読んで自由に考えたことを書きなさい」とか「自分で問題点を指摘して書きなさい」と設問で言われているパターンだ。これは今までずいぶんやったよねえ。

この場合は、まず要約するんでしたよね。

そうそう。このタイプはまず課題文が長いから、何がポイントなのか何が問題なのか、一見して分からない場合が多い。だからまず課題文を要約するところから始める。この場合、課題文がどのようなジャンルなのかによって、その処理の方法は異なる。つまり…


1 課題文が評論…問題+解決+根拠⇒問題と解決の部分を簡潔にまとめる
2 課題文が随筆…体験+感想+考察⇒考察の部分をまとめる


となるわけだ。

その後がちょっと面倒でしたね。

随筆は論点を絞る そう、2 の随筆の場合は、考察が複数ある場合も多いので、全部触れる必要はない。その中から好きな部分を選んでまとめていい。

逆に1 の評論の場合は、解決は一つのはずですよね。だから筆者の解決に賛成か反対かを表明して、賛成の場合は補足・修正に持っていく。


1 随筆…問題を一つ選び、解決を考える
2 評論…A 筆者の意見に賛成の場合⇒補足・修正
    B 筆 者の意見に反対の場合⇒根拠⇒代替案

ただし、2-Bの形は結構難しいし、これが正しいという代替案を考えるのが大変だということでしたよね。

課題文型の代表的パターン

よくできました。けっきょく課題文読解型の設問の処理の仕方としては

1 要約―賛成意見―補足・修正―根拠
     2 要約―反対意見・批判―根拠―代替案

の二つが代表的なパターンとして残るわけだ。この形の設問が、三つの中では一番多いので、解答の方法をよく覚えておくことが大切だね。

資料分析型


資料分析型は主に、グラフや表を使った設問でしたよね。

このパターンの設問の場合は、構造は次のようになる。

読解⇒解釈⇒提案・批判

読解はデータの細部をカットして、その傾向やトレンドをすっきりと見せることですよね。

ここではだいたいの場合、細かな数字は必要ない。数字を「だいたいこんな感じですよ」と文章に変換するところだ。棒グラフなんかは対比や比較などの構文をうまく使って表現したいね。

「Aは〜なのに対して、B は〜である」とか「Aは〜であったが、Bからは〜となった」等の形ですね。

図表を文章にする公式

それに対して、折れ線グラフは「〜から〜までは〜だが、それ以降は〜」などと時間が関係したストーリーがうまくはまるね。とにかく、ここのところはなるべく明快にキメたい。ごちゃごちゃした印象にならないように気をつけることで、ずいぶん評価が違ってくる。

解釈は仮説を作ること

次の「解釈」のプロセスが、イマイチわかりにくいんですけど…

解釈は、本質の探求といってもいいね。

本質? なんだか難しそうな言葉が出てきましたね。

データやグラフに現れている数字は、単なる現象なんだ。それを引き起こしている真の原因があるはずだ。

解釈は、現象⇒本質のプロセス

ははあ、だから背景やメカニズムを探るわけですね。

実例:デュルケームの解釈

そう、自殺の原因についてのデュルケームの「解釈」は有名だね。

デュルケーム?

フランスの社会学者なんだ。彼は19世紀から20世紀はじめまでのフランスの統計を整理して、自殺の原因についての理論を提出した。

つらかったり苦しかったりするときに自殺するんでしょ? この頃不況でリストラされて自殺する人が多いって、TVで言ってました。

自殺は悩みが原因ではない ところが統計を調べるとちょっとニュアンスが違う。たとえば戦争の時は苦しくつらいけれども、意外に自殺は少ない。どうしてだろう?

そーなんですか? 信じられなーい。

データと両立する議論を!

データによれば、むしろ平和な時代の方が自殺が多い。そうすると、苦しさやつらさだけでは自殺の原因とは言えない。
じゃあ、何が原因なんですか?

自殺の原因はアノミーである デュルケームはアノミーが原因だと言っている。アノミーとは、無規範状態といって、生きるための指針が無くなった状態だ。だから平和でも、世の中が混乱してどうしていいか分からないときは、自殺率が高くなる。
 逆に、戦争の時は「敵をやっつけなきゃ」ってみんな一致団結しているから、自殺は少ない。つまり自殺の原因は苦しい生活ではなく、生き方にどれくらい自信があるか、という問題になってしまう。

分かった。解釈ってデータを説明できる仮説を作ることなんですね。

そのとおり。データに出てくる数量とちゃんと両立する理論を立てなきゃいけないんだ。





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