8-A 課題文型と資料分析型の関係
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a 資料問題はデータ解析である b 詩への適用 c 想像より分析を!
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資料問題はデータ解析である
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●先週と先々週の講義で、資料分析型の設問では、特殊なアプローチをとることは分かりました。
読解⇒解釈⇒提案・批判
という構造をとるわけですね。
■二週も続けたから、ちょっと疲れちゃったかったかな。でもこの方法はすごく応用範囲が広いから、つい力が入っちゃってね。君たちにもよく覚えていてほしいんだ。
なぜ解答形式が違うか?
●もう充分覚えました。でも、どうしてグラフ・資料問題は、こんな風に特殊なやり方をするんですか? 他のと全然違うじゃないですか? だいたい他の問題みたいに、解答に例示がないのは、何か変な感じがしますね。
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グラフ・図表は例示である |
■それはグラフや図表自体が、例示と同じ役目、つまり解決を具体的イメージでサポートしている役目を果たしているからだよ。だから、これ以上例をつけ加える必要がないんだ。
●え、グラフ問題ってそういうものなんですか?
■だってグラフや図表は、数字で表したデータだろう。だから例示と同じ働きをする。むしろ抜けているのは、これがどういう問題なのかと理論化する部分なんだ。解釈というのは、具体的データの理論化なんだよ。
●なるほど。だから、図表やグラフを簡単にして、その中に含まれている問題を指摘することが大切なんですね。
■そう、抽象化することで、原因やメカニズムがはっきりする。
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詩への応用
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●ふーん…待てよ。でも、グラフや図表が例示だとすると、もし例だけのような文章が出てきたとしたら、この
読解⇒解釈⇒提案・批判
の構造が応用できるんじゃありませんか? たとえば小説や詩なんか? 小説や詩も作者の思想をそのまま書いてあるわけではなくて、登場人物やイメージに託したりするでしょう。それを抽象化して…
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象徴作用を読みとる |
■キミ、今週はさえているね。小説や詩は、たしかに具体的なイメージしか書いていない。だからそのままでは、何を言いたいのか分からないことが多い。詩や小説のイメージは何かの象徴となっている場合が多いからね。
●象徴って何ですか?
■抽象的な考えを、ある具体的なモノで表すことを象徴作用という。そして、そのモノのことを象徴という。 たとえば「ハトは平和の象徴だ」という時は、ハトという具体的イメージが、平和という抽象的考え(観念)を表しているわけだ。平和は争いがない状態だと考えることはできるけど、具体的にイメージできない。でもそれをハトで表すと、具体的感覚としてイメージできるよね。 こういう風に頭の中で考えたことを、イメージで表す。このイメージを象徴というんだ。詩や小説を読む場合は、何を象徴しようとしているかを明らかにしないと、変な読解になってしまう。
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■次の詩の子豚は何を象徴しているか? |
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何だってそんなに あわてるんだ 早く大きくなって 何が待っていると いうんだ
子豚よ そんなに急いで 食うなよ そんなに楽しそうに 食うなよ
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人間の姿の象徴 |
象徴の実例
■この中では「子豚よ」と呼びかけているね。じゃあ、作者は子豚を読者として想定しているのだろうか?
●もちろん違います。だって豚は字が読めないですからね。当たり前だけど。
■だとすると、外見は子豚にメッセージをしているようだけど、実は人間にメッセージを送っていることになる。
●「あわてるなよ」と呼びかけている相手は人間なんですね。とすると、子豚も人間の姿の象徴と考えた方が自然ですね。
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行ごとの分析 |
■そうだね、人間が生き急いでいる姿を、急いで食べている子豚の姿に重ねて表現しているわけだ。もっと行ごとに細かく見ていくと、
「何だってそんなに/あわてるんだ」=急ぐことへの批判 「早く大きくなって/何が待っていると/いうんだ/子豚よ」=死が待っている 「そんなに急いで/食うなよ」=急ぐことへの批判2 「そんなに楽しそうに/食うなよ」=死に気づかない、あるいは現在に没頭している状態
などと意味づけを考えることができるね。これをまとめるとこの詩のメッセージが出てくることになる。
●つまり、この詩は「人間が将来の死の運命にも気づかず、現在に一生懸命になって生き急いでいる姿」を批判していることになるんですね。
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想像より分析を!
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■その通り。ここで大切なのは、勝手に想像しちゃいけないということだ。言葉を冷静に分析していけば、自然に詩の意味は見えてくる。
●エー、そうだったんですか? でも学校の先生は「詩は感情の高まりの表現なんだから、どう解釈してもいいんだ」って言ってましたよ。
詩にも妥当な解釈はある
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解釈の範囲に入る |
■それは明らかに言い過ぎだね。確かにたった一つの解釈なんてできないけど、解釈はある範囲の中に入ってくるはずだ。この詩だって、交通事故をおこしちゃいけないという意味だとは言えないだろう?
●そりゃそうですね。
■ちょっと変わっていて面白い解釈はできる。とくに文学研究では、そういう面白い読みを競争して行う。でも、それだって、そういう読みができるんだ、と証明しなくちゃね。
●ふーん、詩の解釈にもある程度客観性が必要ってわけですね。で、それから先はどうするんですか?
■それは今までと同じさ。いろいろ問題を探して、批判したり、いいところを指摘したり、社会との結びつきを考えたりすればいいのさ。
●詩って苦手だったんだけど、ちょっと分かってきたみたい。
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