6-B 隠れたメッセージを読みとる


a  文章化のパターン
b  複雑な表現の読みとり
c  表現の意図を見抜く


文章化のパターン


グラフが表している情報を、単純化して文章にすることは分かりましたけど、けっこう細部が面倒ですね。それぞれのグラフの形式によって、微妙に言語化のやり方が違ってくるでしょ。

そうだね。前節のExerciseでやったように、棒グラフでは対比や比較の文章にすることが多い。「〜は〜である。それに対して〜は〜である」などという形を取らなくてはいけない。だから、データを大きく二つのグループに分ける必要がある。

三つ以上を比べている場合は、どうするんですか?

三つ以上を比べる場合

それは面倒だね。まず二つを比べておいて、さらにその二つと三つ目を並べることで、違いを強調するしかない。

「〜は〜である。それに対して〜は〜である。一方〜については…」なんて感じですか?

うまい、うまい。今やったみたいに、接続詞も同じものが続かないように気をつけなきゃいけないね。

他のグラフの文章化の方法は?

このほかに折れ線グラフや円グラフもあるんでしょう? 全部文章化の方法が違うんですか?

もちろんだよ。

ホントに面倒だなー。

グラフを文章化する時のポイントをまとめておこう。言葉に直す方法を覚えてほしい。

1 棒グラフ…対比・比較を強調する⇒「〜に対して」「一方」な     どの言葉を使って表現する。

2 折れ線グラフ…時間に沿ったストーリーを表す⇒「〜から〜 までは〜だが、それ以降は〜」などという表現が有効であ る。

3 円グラフ…順位を表すのが中心である。「A は〜位だが、B  はそれに続いている」などの表現が使えるだろう。

4 表…細かい数字の変化にポイントがある。その中に大きなト レンドを読みとる。たいていは増加か減少のどちらかとい うおおざっぱな傾向であることが多い。複雑に増減する量 はグラフで表すことが多い。

 複雑な表現の読みとり

難しいのは、これらが交錯して表されている場合だね。次の例題を見てみよう。これは前節でやった「科学技術に対する国民意識」のグラフの続きなんだけどね…



これを「読解せよ」と言ったら、ある生徒がこんな風にまとめてしまった。どこがいけないのか、考えてみよう。


生徒解
 「科学技術に対する国民意識」のグラフでは、国民は科学技術を必要だと感じている人が多い。ところが「将来の希望職業」のグラフによれば、高校生や中学生の理工系志望者は圧倒的に少ない。これでは日本の経済発展は望めないだろう。


どこか悪いのですか? 私はこれでいいと思うけど…簡潔だし、話はよく分かるし。

時間表現の意味は?

じゃあ聞くけど、このグラフは棒グラフなんだけど、どうしてわざわざ平成元年⇒4年⇒7年と時間の順に並べられているのだろう?
たまたまじゃ…ないですよね、やっぱり。

「高校生や中学生の理工系志望者は圧倒的に少ない」という内容を書かせたいだけだったら、単年度だけ、たとえば7年度だけのグラフを示せばいいんじゃないのかな? わざわざ三つも並べるのは無駄だろう。

そう言われりゃそうですけど…それじゃどういう意味があるんですか?

表現の意図を見抜く


時間の順に並べてあるのは、この問題の作成者に何らかの意図があるからなんだ。つまり単に現在多いか少ないかではなくて、時間を追って変化していることに注目してもらいたいから並べたと考えられる。

そっかー。けっこう深読みしなきゃいけない所もあるんですね。

なにしろグラフや表には言葉がないからね。何を読みとって何をカットするかは、とても微妙な問題なんだ。

グラフを並べる意味 そうすると、このグラフを読解するには、時間に沿ってこう変化したとか書かなくちゃ完全ではないわけですね。

ここだけ、時間順で書いてあるからには、そう読みとるのがよさそうだね。

中学生から高校生になると、理工系志望者が増えるという傾向は、どうですか?

これは、高校生になって、次第に進路が見えてくるからなんだろう。特に理科系だけが増えているわけではない。その証拠に他の分野の志望者も増えているからね。

なるほど…

時間に沿っての変化も考える

時間的に見ると、平成元年⇒4年⇒7年となるごとに、少しずつ志望者が増えている。

理工系の重要性がだんだん分かってきたのかな?

さらに、医療系への志願者が平成7年になると、大きく増えている。

そんなに増えていますか?

たしかにひとつだけ見ると少ないけど、隣の理工学の増え方と比べてごらん。ずっと多いだろう。

そう言われてみれば…

何を大きいと考え、何を小さいと考えるかは、他のものと比較して決まってくるんだ。

相対的に評価する 相対的な評価ってわけですね。

そういうことだ。さて今までの考察をまとめて、このグラフを文章化してみよう。

「中高生の理工系の志願者は少ないとはいえ、最近少しずつ増える傾向にある。また医療関係への志望者は最近大きく増えているのも注目される」なんてどうでしょうか?

うん、妥当なまとめ方だね。





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