6-A グラフの特徴と情報整理



a  データを読むとは?
b  各グラフの特徴
c  重要度の判断


データを読むとは?



PART1では主に、文章を「読む」方法をやりましたけど、小論文にはグラフをもとに書けというのもよく出ますよね。

社会科学系とか、自然科学系ではよく出てくるね。実は、この場合はちょっと特別なノウハウがあるんだ。

どういうものですか?

グラフや表でも「読む」ことに変わりはないんだけど、その後が少し違っているんだ。そのコツさえつかめば、問題ないよ。

でも文章みたいに、問題と解決なんて形式では書いてないし、具体例が書いてあるわけでもないから、例示の部分をカットするなんてできないでしょう?

必要なデータを見分ける

それはそうだけど、表やグラフも情報やデータの一つだ。その中には必要でない細部もけっこう書いてあるんだ。そういうところはできるだけカットして、必要なことだけ残す、それがデータを読む、ということなんだ。

じゃあどれが不要でどれが必要なのか、見分け方が必要になってきますよね。それはどうやるんですか?

一般に表やグラフで表せる情報の量は、文章で表せる情報の量よりずっと多い。それはコンピューターでヴィジュアル情報を送る場合に、文章だけより何十倍も容量が必要なのを見ても分かる。グラフを使った問題というのは、簡単に言えば、ヴィジュアル情報を文字情報に変換する、という手続きに似ている。情報量をかなり制限しないと容量が足りないんだ。

図表も課題を読む-情報を制限する 何で情報量を少なくする、なんてバカなことをするんですか? 情報量は多い方がいいにきまっているじゃないですか?

そうでもない。文章の要約と同じで、情報量の少ない方が全体の様子が一目で分かるんだ。「木を見て森を見ず」という言葉があるだろう? いろいろ細部を気にしすぎると、かえって全体が分からなくなる。表やグラフの読みとりのコツは、どう情報をカットするか、にかかっているんだ。これは要約問題と同じだろう。

だからー、何をカットするんですか?

まあ、あわてないで。その方法を教える前に、グラフや表がどのように情報を伝えるのか、おおざっぱな知識を得ておこうね。

 各グラフの特徴


まずグラフにはどんな種類があるか、知っているかな?

棒グラフとか、折れ線グラフとか。あと円グラフなんてのもありましたよね。

代表的なグラフはそんなものだね。じゃあそれぞれはどんな情報を表すんだろう。

どんな情報?

棒グラフ、折れ線グラフの特徴

グラフはそれぞれに特色があって、表せる情報の質も違うんだ。

そんなことはじめて聞きましたけど。

グラフの形式によって、得意な分野とそうでない分野があるんだ。たとえば棒グラフは比較や対比を表すのによく用いられる。性別による意識の違いとか、日米の輸出入の金額とか、白と黒に色分けをして違いを表すことが多い。


 これは二つとも同じ数値を表しているグラフだけど、明らかに印象に差があることに気がついたかな? 左のグラフが、一年ごとの違いを強調するのに対して、右のグラフが推移というか変化というか、ある時間の流れを表しているように感じられないかい?

そう言われれば、右の方がどんな風に変わったか、に注意が向く感じがします。

棒グラフは、ひとつひとつが互いに高さを競っているから、競争・比較・対比という雰囲気が出やすいんだね。

グラフのヴィジュアルっていうのも結構微妙なんですね。

円グラフの特徴

円グラフは順位を表す

一方、円グラフは大雑把な順位を表すときに使うね。たとえば政党別の支持率とか、自民党が一位、民主党が二位なんて、新聞の世論調査などでよく使うだろう。全体の中であるものが占める割合が一目で分かって便利だけれど、逆に二つのものを細かく比較するのには向いていない。たとえば世論調査で、自民党の支持率が32% で民主党の支持率が29% の時なんて円グラフで表しても、違いはすごくわかりにくい。微妙な角度を見分けるのはほとんど不可能なんだ。さらに差が接近している場合など、円グラフで描いてもほとんど意味がない。



どれも同じに見えちゃいますね。

こういう場合はパーセンテージを横に数字でつけておかないと分からない。

表は少しの違いを強調する

表は正確だが、直観的に理解できない

グラフ表示というのは一見客観的なようだが、目盛りの取り方や集計の仕方でずいぶんイメージが変わるから、注意する必要がある。最後に表だけど、これは一番読みとりが難しい。数字は正確に出てくるから、情報量は多いけど直観的理解がまったくできない。


どうやって読みとるんですか?

この場合は、ほんのちょっとの違いでも数字が全く変わる。0.5% の増減でも数字の形は、はっきり違うからね。たとえば9.5と10.0は棒グラフで書けばわずかな違いだけど、表だと大きく感じてしまいがちだ。でももしかしたらその0.5% の違いはとても重大なものかもしれない。たとえば会社の利益率などの数値なら0.5% というのは大変な違いだろう。

重要度の判断


その違いが重要かどうか、判断しなきゃいけないですね。

判断には、ある程度個人差が出てくる。ある人が重大だと見なした違いが、他の人にとっては大した違いではない、というようなこともあり得る。もちろんこの事情は他のグラフでも同じなのだけどね、特に表の場合にハッキリ出て来るんだ。

読み方には個人差がある

人によって読み方が違ってくるのかー。重要な違いかどうか、客観的基準はないんですか?

ないね。これが絶対という読みはない。だからデータの読みとりには、うまい人とそうでない人が出てきてしまう。
うまい読み方とは?

「うまい」とか「へた」とかってどこで決まるんですか?

一般的に言うと、グラフの読みは「数字やグラフを分かりやすいストーリーに置き換えること」だ。だから、そのストーリー化が明確で分かりやすいのが、いい読み方と言えるね。でも分かりやすければそれでいいというわけでもない。面白い、という要素も必要だ。

「面白い」ですって?

分かりやすくて面白いストーリーにする そりゃそうだよ。せっかくストーリーにするんだからね、つまらないもの、あたりまえのものを示したってしようがないだろう?「あっ、こんな読み方があったのか」と驚くような読み方がいいに決まっている。

けっこう、むずかしいなあ。

正確さと面白さのバランスが大切なんだね。まあ、でも最初のウチは正確さをねらった方が無難だね。





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