1-B 理由と説明 |
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a 意見には根拠が必要である
b 理由はくわしく説明する
c 説明は言い直しである
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意見には根拠が必要である |
理由をつけて説得力をます |
意見を言うときに必要なこと
■さて、小論文は問題とその解決だと言うことが分かったとして、例題1の 「原発問題」で「問題とその解決」を書いてみよう。君は原発建設に賛成か 反対か、どっちだい?
●やっぱり必要だから賛成だと思います。
■なんで?
●なんでって…えー、困っちゃうな、いじめないでくださいよー。
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意見には理由が必要だ |
■別にいじめてないよ。意見を言うときにはね、必ずその理由も付けなくて はいけない。じゃないと、それは他の人には正しいか、正しくないか判断 できない。ただの好き嫌いに終わってしまう。
●好き嫌いじゃいけないんですか? 私だいたいのことは好き嫌いで決めてますけど。「私これ嫌い!」って言ったら、もう絶対変わらない。
■でも、君の隣に「原発大嫌い」って言う人が出て来たらどうする?
●もう無視しちゃう!
■でも「原発を作るかどうするか」を議会なんかで決めるときに、その人を 無視するわけにはいかないだろう。たとえば住民投票する時には、君も一 票、相手も一票で平等だもんね。無視するって言ったって、一票の権利は あるから相手の意見も勘定に入れなければならない。そういう場合はどう するの?
意見が違ったときは?
●だって意見の違いってどうしようもないんじゃないですか? 話し合ったってどうせ無駄ですよ。
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意見の違いを乗り越えるには?
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■つまり互いに無視しておしまい、って訳だね。話し合いしても仕方ないし、 嫌いは嫌い、好きは好きで互いを理解することはできない、というわけだ。
●嫌いは嫌い、好きは好き同士で集まれば、同じ考えなんだから楽しいん じゃないですか?
■それで?
●少しずつ味方を多くする。
■どうやって?
●私の魅力で…ダメか?
■それとも買収するとか…
●まさか。それはないよ。
■でもどっちも似たようなことだよ、お金でも魅力でも。相手を一時ぼーっ とさせて、自分の味方にしちゃう。好き嫌いで決めるなら、そういうこと になってしまう。反対意見の人は理解できないんだから、お金か何かでつ るしかない。
●すごい、なんか政治活動みたい。
■でも、それって何かおかしくないか。
●たしかに…変ですね。
■政治家は汚いってみんな言うけど、君が考えつく方法も同じようなことに なってしまう。
●じゃあどうすればいいの?
■意見を言うには根拠が必要なんだ。
●根拠? |
理由はくわしく説明する |
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■根拠の中で代表的なのは、まず理由だ。なぜ自分の意見が正しいか、他の 人にも理解できるように説明する。そうすると他の人はその理由の説明を 聞いて、正しいか正しくないか判断することができる。正しいと思えば賛 成するし、正しくないと思えば批判したり反対したりする。これは民主主 義の基本だね。
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根拠で正邪を判断する |
●でもその人の人格がどうしても嫌いだったら?
■そういう場合もあるけどね。でも少なくとも学問の世界では、それは許さ れない。どんな嫌いな人でもどんなにいやな性格の人でも、正しいことを 言っているときは正しいと認める、これが基本原理だ。
●それってけっこうシンドイですね。小論文は学問なんですか?
■少なくともそういう能力を見るための道具であることは確かだね。例題をやってみよう。
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■原子力発電が必要な理由を挙げよ。
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■さて、君が「原発を必要と思う理由」は何だろう?
●需要があるからじゃないですか? 私たち電気をいっぱい使っているでしょう。原発がないとその電気がつくれないじゃないですか。
■でも、電気を作るには火力発電所とか水力発電所もあるんじゃないの?
●それはそうだけど、火力発電所は石油を使うじゃないですか。石油は日本 ではほとんどとれないんでしょう。このままじゃエネルギーが自給できな いし、それに後数十年もすると産油国でもとれなくなってしまうって聞きましたよ。その後どうするんですか? 原発しかないじゃないですか。
■なるほど。じゃ水力発電は?
●だってダムをつくると自然が破壊されるじゃないですか。反対も多いでしょう。だからこれからはあまりつくれないと思うなー。
■つまり、将来原発に変わる発電手段がなくなってしまうということか。
●そーですよ。
■今君の言ったことを文章としてまとめてみよう。まず一番の理由としては、「日本における電気の需要を満たす手段としては、原子力以外考えられない からだ」となる。
●すごーい、何かえらそーですね。
■言っている内容は変わりないんだけどね。
●自分の言ったことだなんて信じられなーい。
■次に今の理由をもう少しくわしく説明してみよう。ところで「説明」とは何か?
●何ですか、急に。「説明」って…くわしく分かりやすく、そのー…
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説明は言い直しである |
読者に分かるように説明する |
■そう、「説明」はくわしく分かりやすく言い直すことだ。大切なのは、
説明=言い直し
ということだね。この部分が君たちは苦手みたい。たいてい理由の部分が 短すぎて、自分では分かっているつもりなんだけど、読者にはさっぱり分 からないということになる。何も情報を持っていない人でもちゃんと分かるように、いささかくどく書きなおすぐらいに考えていいね。 |
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電力の供給手段としては、他に火力発電と水力発電が考えられるが、両 者とも問題がある。まず前者は石油を使うが、日本は石油資源に乏しく、 自給できない。国際情勢の変化によって輸入ができなくなるかもしれない。 しかも世界的に見ても石油は後数十年で枯渇してしまうという。将来のた めには石油に変わる発電方法が必要だ。 |
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さて、水力発電については、自分で書いてごらん。
●えー、急にそういう問題出すんですか? 難しいなー。えーと…「水力発電については、ダムの建設に対して反対が多い。川をせき止め、大規模に自 然を破壊するからである。環境保護が叫ばれる現在、自然環境を破壊するダムの建設を進めることは困難になってくるだろう。」なんてどうでしょ う。
■けっこう上手いじゃないか。でも、これでは原発以外の発電法がダメだと 言っているだけで、原発の方がよいという積極的な理由になっていない。
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積極的な理由は? |
●それじゃー、もう少し補足するかー。原発の方がいいことを言うんでした よね。前の反対のことを言えばいいんじゃないかな。「これに対して原発 は、そのタイプにもよるが、資源をほぼ半永久的に利用することができ、資源の枯渇を心配する必要がない。」
■その調子。他には…
●「しかもダムに比べたら環境を大規模に破壊することもない。環境を保護するためにも、原発は最適の発電方法なのである。」すごーい。小論文がで きちゃった。
■ちょっと並べて書いてみようか。 |
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原子力発電所の建設は必要である。なぜなら日本における電気の需要を 満たす手段としては、原子力以外考えられないからだ。電力の供給手段と しては、他に火力発電と水力発電が考えられるが、両者とも問題がある。 まず前者は石油を使うが、日本は石油資源に乏しく、自給できない。国際 情勢の変化によって輸入ができなくなるかもしれない。しかも世界的に見 ても石油は後数十年で枯渇してしまうという。将来のためには石油に変わ る発電方法が必要だ。一方水力発電については、ダムの建設に対して反対 が多い。川をせき止め、大規模に自然を破壊するからである。環境保護が 叫ばれる現在、自然環境を破壊するダム建設を進めることは困難になって くるだろう。これに対して原発は、そのタイプにもよるが資源をほぼ半永 久的に利用することができ、資源の枯渇を心配する必要がない。しかもダ ムに比べて環境を大規模に破壊することもない。環境を保護するためにも、 原発は最適の発電方法なのである。 |
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●私、本当にこういうことを言っていたんですか?
■少し言葉づかいを変えただけなんだけど、大部印象が違うね。初回でこれだけ出来れば立派だよ。
●私、すこし自信が持てました。
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