PHP文庫 

いい文章には型がある

吉岡友治 著  PHP新書 
   定価 821円(税込み) 
 
 
  いい文章には型がある


◆今まで、ボカボの文章論は「論理的文章」の解説が中心でした。でも今回は、それだけでなく、物語的文章(つまり小説や歴史)・直観的文章(つまり随筆やエッセイ)など、いわゆる「散文」と言われるジャンルを横断しています。いわばボカボの「散文小百科」です。

 昔は、文章を書く人は少数派だったのですが、現代では、ブログ・トゥイッター・フェイスブックなど、文章を発信する機会がものすごく増えました。他人の書いた文章情報を咀嚼し自分なりに解釈して再発信することは、もう日常の一部です。

 それなのに、文章をどう理解し、どう書けばいいのか、誰も確実なことを言ってくれない。作家の書く文章論は芸道論になりがちだし、ジャーナリストの書く文章論は「れる・られる」の別とか枝葉末節に流れがち。でも、そんなものは、文章を読み書くのには役に立たない。

 かつて私は「料理をしよう」と思い立ったとき、料理本をいろいろあさった。でも食通の書いた本は金がなきゃ追体験できないし、家庭料理本は「カップ何杯」まで書いてあるけど、細かすぎて勘所がわからない。結局、一番参考になったのは小説家壇一雄が書いた「壇流クッキング」でした。

 彼の本では分量も味もおおざっぱにしか書いてない。そんなものは「自分の舌で確かめろ!」の一言。もったいぶった神秘的教説もゼロ。「ないものはないで済ませろ!」そのかわり、ここだけは絶対にクリアしろ、と力強く指南する。

 私が目指したのは、そういう力強くわかりやすい「小著」です。入門書は短くなければなりません。本質的イメージだけを伝えて、細かいところは読者の自由に期待する。こういうコンセプトがうまく実現できたかどうか…それはぜひ読んで確かめてください。

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