シニアのロースクール日記 (37)2007年11月   
 
                
11月14日(火) アメリカの陪審員制度
 
 法律英語の今日のテーマはアメリカの陪審員制度である。授業はビデオと英文のテキストを併用して進められる。講師は、ミネソタ州の弁護士でR大の講師でもある。

 事件はメイン州で狩猟シーズン中に実際に起こった出来事である。ハンターが、鹿と間違えて女性に向かって発射し、殺してしまった。場所は、森の中であったがおよそ鹿がいるようなところではなく、女性の自宅の裏庭であった。

 陪審員の評決は、驚くことに過失致死ではなく無罪である。メイン州は、ロブスターの他にこれといった産業はなく、狩猟で成り立っている。ハンターがメイン州にやってくるので、ホテルやレストランが賑っている。もし有罪にすると、今後ハンターがやってこなくなり、州の経済に悪影響を与えるとの判断が働いた。

 もっとも、刑事上は罪を問えないとしても、民事上多額の損害賠償金を請求されたそうだ。

 もうすぐ、日本でも裁判員制度がスタートする。日本で、類似の事件が発生した場合、裁判員は無罪の評決をするだろうか。全米ライフル協会が、隠然たる勢力を誇っているアメリカ社会特有の判断だと思った。

11月27日(火) 模範答案の借用

 先週来の寒波到来で、図書館脇の池の周囲の紅葉が鮮やかに色づいた。その横を通って、会社法の演習に出席した。

 開口一番、N先生が「最近、模範答案が出回っているらしい」とおっしゃる。N先生のゼミには聴講生を入れて十数名が受講している。毎週日曜日深夜12時までに、メールで課題を提出し、月曜日に添削され、火曜日に解説というタイムスケジュールで進む。課題の内容は、ほぼ前期の商法総合演習と同じである。前記の演習では、3名一組で答案を作成し、添削するという形で進められたため、模範答案が蓄積されることになった。

 今日の課題は、株式交換である。株式交換は、企業の組織再編の一つの手法として最近多くの会社で利用されている。しかし、日頃なじみがないテーマであり判例も少ないので、レポートを書きにくい。自分も途中で投げ出したいと思ったほどだ。

 そこで、つい一部の学生が、他の科目でも多くの宿題が出ていることもあってか、模範答案に安易に飛びつき、先生にメールで送ったというのが真相のようだ。

 間違っても、自分の頭で考えた方が身につくと思うのだが、それよりいい評価をされること期待したのだろうか。実社会では、教科書に書かれた事例はまず起こりえない。事例ごとに解決を図る必要がある。ロースクールでは、他人の模範答案を借用するより、このことを学ぶことの方がもっと重要なはずだ。

 10月から始まったNHKの朝の連続ドラマ「ちりとてちん」は、落語家を目指す若い女性の物語だ。不器用で直ぐに諦めて投げ出そうとするところを、周りの人から励まされて食いついていく姿を描いている。若い人への励ましのドラマである。毎朝、この番組を見てから登校している。


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