シニアのロースクール日記(342007年8月   
           
 
8月11日(土) ミネソタの思い出        
 
 テレビや新聞は、ここ連日アメリカのミネソタ州ミネアポリスで起こった橋の崩落事故を報じている。今日現在、死者の数は8名に達したという。犠牲になられた方に心より冥福を祈る。

 実は、この橋を何度も車で渡ったことがある。1994年から1995年にかけて、ミネソタ州のある会社と、自動車用電子部品を製造するための合弁会社設立の仕事に携わっていた。ミネアポリス空港でレンタカーを借り、事故のあった橋を渡り南下、メイヨ・クリニックで有名なロチェスターの町を経由して、約3時間の道のりを運転してミシシッピー川沿いにあるパートナーの会社まで何度も往復した。

 合弁会社の会社形態は、株式会社ではなく、Limited Liability Partnership(LLP)であり、当時の日本企業にとってはなじみの薄い形態であった。この会社形態は、昨年の会社法改正により合同会社として日本でも認められることになった。

 ある年の5月のことである。月曜日からの内合わせのために、金曜日から宿泊する主張計画を立てた。アメリカの航空会社は、競争が激しいため、週末を挟む旅行プランを立てると、格安の航空券を手に入れることができたからである。宿泊料金を払っても、全体として安くなる大幅割引になる。ミネアポリスで一泊した後、ハイウェイを北上し、土曜日はインターナショナル・フォールズというカナダ国境の町に宿泊した。翌日は、菜の花や麦畑を見ながら一般道路を南下した。突然、視界が広がり、五大湖の一つスペリオル湖が姿を現した。是非カメラに収めようと、車を道路脇に停めた。

 あわてていたためか、キーを差し込んだままドアをロックして飛び出してしまった。携帯電話も車内に置いたままである。このような場合、治安の悪いデトロイトであれば、通りかかりの車を止めて助けを求めると、運転手が強盗に早代わりすると聞いていた。迂闊に動くことができない。

 ところが、ミネソタは事情が違う。途方にくれていると、程なくして一台の車が止まってくれた。事情を話すと、隣町に警察があるので連絡をしてくれるという。1時間ほど経った頃、パトカー(英語では、Police Carという)2台が助けに来てくれた。薄い鉄板をドアの窓ガラスに差し込み開錠してくれた。パトカーが来るまでの間、他に2台の車が止まり“May I help you.モと聞いてくれた。その内一台は、数百メートル走った後、わざわざ引き返してきて何か助けが必要かと聞いてくれたのである。

 田舎に住むアメリカ人の親切さに出会うことができた。ミネソタの良い思い出の一つである。早速、翌日、地元の新聞社の編集長あてに、地元の人と警察に感謝の気持ちを表した手紙を送った、掲載されることを期待してのことであった。 

 合弁会社は、その後解消することになった。相手方の会社が、アメリカの大手の自動車部品会社に買収されたため、合弁契約の規定により、勤務先の会社が買取オプションを行使したためである。9月末に始まる後期の授業では、選択科目として企業法務実務を受講することにしている。


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