シニアのロースクール日記(302007年4月
 
4月12日(木) 姿勢をただす
 
 今年の桜は、暖冬の影響で例年より開花が早かったが、散るのはなぜか遅く、長い間春の風景を楽しむことが出来た。満開も過ぎ、少しばかり緑の葉の混じった桜並木の停留所で、帰りのバスが来るのを待っていると、二年生まで同じクラスであったTさんがやってきた。Tさんは、関西空港近くの町に住み、片道1時間50分もかけて通学している。阪急電車の西宮北口で別れるまで、次のような会話をした。

:今学期、選択する科目はもう決めましたか。

:決めました。今晩家のパソコンから履修登録します。

:商法総合演習は選択しますか。

:評判を聞くと、かなり厳しい指導をされるので、取らないことにしました。

:私も、ストレスの溜るような授業は受けないことにしました。勉強は楽しくしないと身につかないですよね。

:ところで、今何かスポーツをしていますか。

:会社に勤めていた頃は、ゴルフをしたことがあります。止まっているボールを打つのは簡単だと思っていましたが、意外に難しいです。最近でも、時々空振りする夢を見たりすることがあります。

:テニスをされると思っていました。

:テニスはしたことがありません。中学時代に柔道をしていました。県の大会に出たことがありますが、1回戦で負けました。Tさんはいかがですか。

:私は、高校時代に剣道をしていました。

:それで、いつも背筋を伸ばして姿勢がいいのですね。この間、NHKのラジオを聴いていたら、ドイツ文学の小塩節さんが、こんなことを言っていましたよ。ドイツでも、親が年頃の娘に「女らしくしなさい」と言うそうです。ところが、「女らしさ」の意味が日本とは全く異なると言っていました。
 家から一旦外へ出ると、背筋を伸ばして真っ直ぐに歩くことが、ドイツの女らしさのようです。背筋を伸ばすと、世の中のことがよく見える。電車に乗っても、座席に腰掛けないで真っ直ぐに背筋を伸ばして立ち、車内を見渡し他の乗客を観察する。決して、座って居眠りをするようなことをしない。このように、周囲の人の観察力を高めて、自立した女性が養われていくのだそうです。これがドイツの女らしさです。

:電車の中で化粧に余念のない人をよく見かけますが、ドイツの「女らしさ」と全く逆行することをしていることになりますね。自分の外観だけが気になり、周囲のことを気にしない。

 そのうちに、電車は西宮北口に着き、別れた。今年も、多くの学生が入学してきた。気になることは、Tさんのように背筋を真っ直ぐに伸ばして歩く学生が少ないことだ。甲東園の駅から大学までの15分の緩やかな坂道を、多くの学生は足を引きずりつつ、ゆっくりと歩く。私は、毎日いらだちながら、重い鞄を肩に掛け、彼らを追い越し通学している。


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