2010年1月14日
●『進級への道!』
![寒椿](image/kantubaki.jpg)
前回に引き続き読んでくださっている方々、有難うございます。また今回から読んでくださっている方々も有難うございます。
今回は、ロースクールに入学した最初の1年を振り返ってお話しようと思います。
題して、『進級への道!』である。
私がローに入学した当初のゴール設定は何と言っても「進級すること」。司法試験に合格することでも、良い成績をおさめることでもない。進級することである。今振り返れば、なんとも低次元・・・とも言い切れない事情もあるのである。
私が所属するローの「末修者」3年コースは、今まで法律を勉強したことが無い人達のためのコースだと思っている人が世間には結構いる。ところがどっこい、現状は、構成員の約9割が法学部卒や旧司法試験のために予備校に通って一通り勉強してきている。旧司の択一合格者なんていうのも珍しくはない。年齢層も20代前半が中心で、25,6歳といっても院卒だったり、旧司浪人だったりする。つまり、社会人から転向し、おまけに全く勉強してこなかった私は、相当、レアな存在なのである。おそらく、これは他のローでも似たような状況だと思う。
だから、入学した最初の半年は、毎日をやり過ごすので精いっぱいだった。授業は先生の質疑と学生の応答を軸に進められていくのだが、自分に質問がくるのはまさに恐怖。何故なら、先生の質問が日本語であることはわかるのだが、何を聞かれているのか、何が問題になっているのかがさっぱりわからなかったのである。もちろん、他の学生の流暢な発言なんて意味不明である。
そして、1年間が終わってみると、進級要件(成績が一定の数値まで達していないと進級ができない。)が満たせず、進級できなかった人が全体の2割近くいたと聞いたが、やはり私と同じような純粋末修者が占める割合は大きかったようにみえる。
こんな状況だったから、進級要件こそ余裕があったが、はっきり言って中庸な成績で1年が終わってしまったのである。
おそらくどこのローでも新入生のために、歓迎会や上級生に勉強のやり方について相談できる機会が設けられていると思うが、私が相談すると、学習経験者や上級生からよく言われたものである。「とにかく、本をしっかり読んで授業でやったことを理解すること、そして期末試験は論文試験だけど、いきなり書くのは大変だから、少し練習しておいた方がいいよ」と。
私は、な〜る〜ほ〜ど〜本をよく読んで、試験前になったらちょっと書いてみればまともな成績がとれるようになるのか〜と深く感心するわけがないっ!!! ただそれだけのことなら、同じ時期にスタートしたのに成績の差がつくわけがない。問題は、その先なのだ。本をどう読むか、どういう状態が理解していると言える状態なのか、知識の射程をどうとらえるか、どういう答案を書くことが求められるのかである。(もちろん、親切に助言して下さった方のアドバイスは正しいと思う。ただ、私にはそれだけじゃどうやって成績がとれるのかわからなかったのである。)
そこで、私がとった方法は、まず、司法試験短期合格者やカリスマ予備校講師、現役弁護士の合格体験談をいくつか読んでみたのである。成功パターンをもっている人に聞くのが一番てっとり早いからである。そこには、共通点があった。それは、早い段階から問題を解くことである。論点をある程度インプットしたら、完全に理解していなくても覚えていなくても、まずは問題を解いて実際に文章を書くのである。そして予備校のDVD講座を活用するのである。
結果的には、この方法は良かったと思う。何故なら、書くことで、1、自分がわかっていないことがよくわかる 2、問題を考えることで、わからなかったことがわかるようになる 3、記憶が定着する 4、どの範囲の知識まで抑えておけばいいのか、押さえ方がわかってくるからである。
そして、予備校のDVD講座は短時間で全体の構造をなんとなくだけれど把握することができる。この、全体の構造を把握するってところが、実はすごく大事なんじゃないかと思う。そして、全体の構造をなんとなくでも知っているか知らないかが、純粋未修者と、経験者の大きな違いなんじゃないかと思う。知識の量が決定的な違いではないのではないかと私は思う。
どういうことかというと、1年の前期の期末試験は、刑法の答案をそれなりに書いていたのに、追試を受けることになったのである。そのとき、私は、犯罪成立においてどの部分(たとえば、構成要件該当性のなかの実行行為の部分とか)の問題なのか、を全く意識しないでひたすら論証だけを覚えるような勉強をしていたことに気付いたのである。というか、初めて刑法の基本書を手にとって勉強したのだから、全体構造など知るわけもなく、また、理解するので精いっぱいで分析的な勉強ができなかったのである。これじゃぁ、問題文を読んでもまともな分析ができるわけがない。
けれども一度、学部生のときに、仮に適当だったとしても刑法について一通り耳に入れていたり、予備校で学習していれば、今、授業で学んでいることや判例が、全体のなかのどういう位置づけになるのか、他の論点とどういう関連性をもつのか、ということを頭の中で整理しながら学べるし、記憶も定着していくのだと思う。これは、全科目について言えると思うし、体系的に整理されている民法なんかは特に言えることなんじゃないかと思う。
知識の量は、勉強時間を増やすことで日を追って増えていくけれど、全体構造を意識することは、それこそ、一度全体を通して触れないとできないことである。でも、これが一番法律を勉強するうえでは、大事なことなんじゃないかと思う。これが、私が前回全く勉強してこなかったことを深く後悔した理由である。
だから、私は、刑法の追試をきっかに、休み中に、新しく学ぶ科目は予備校DVD講座で1.5倍速で一通り耳にいれたのである。
もちろん、これは私がとった、楽に短時間で成績がなんとかなる方法であって、実際には、ただひたすら基本書を読みこんで、信じられないような良い成績を収める純粋末修者の方もいる。私の方法が絶対におすすめなんてことはまずない。
伝えたかったことは、常に点数をとることを意識して勉強をするということである。そして、点数をとるための手段は人それぞれである。
何故なら、法律の勉強は、量も多いし、奥も深い、けれども、勉強できる時間は限られている。更に、私たちが最終的に合格をする試験は、学者登用試験ではなく、実務家登用試験だからである。
ずっと、真面目に勉強していたのに進級できなかった人もいるし、知識も正確で豊富なベテランが、成績はそこまでのびなかったりもする。同じ量の、もしくは少ない勉強量で進級したり良い成績を収めた人は、おそらく、試験で点をとるという目的に対する手段がある程度正しかったのだと思う。
特に純粋末修者は、入学当初はとにかくまわりのみんながすごく見えるし、とにかく焦るし、いろんな情報やアドバイスが周りには溢れていて、自分のすべきことを見失いやすい。
でも、究極的には、進級できるかどうか(最後まで低い目標設定ですいません・・・)、良い成績がとれるかどうかは、何の本を使ったとか、誰々先生のレジュメがおすすめ、とかそいうことではなく、自分の現在地とゴール(期末試験で点をとること)との距離をつかみ、そのために自分には何が必要かをなんとなくでもいいから知ることができるかだと思う。
これは期末試験だけではなく、司法試験、更には仕事においてもいえることだと思うんだけどね♪
なんか、たいして成績もよくないくせに、経験者ぶって偉そうなことを書いてしまった気もするけれど、実際、私の1年前期は精神的にもかなりきつかった。もっと精神的に楽に構えることができたらなら、あの時、もっと勉強できたのにな〜と思ったりもする。
私は、新しいことに挑戦することが好きなのだけれど、新しい環境が大の苦手で、環境や人に慣れるのに、半年はかかる。
ましては、一足先にローに入学した会社のOBに、入学前に話を聞きに行った際に、授業後、先生が黒板を消しているのを手伝ったら、他の学生から、「点稼ぎだと思われるからやめた方がいいよ」と言われた!等々、今いる世界とは全く違うから、覚悟した方がいいよ、と言われていたのである。
たしかに、サラリーマンの社会とは全く違った。だって、恐れを知らない若くて初々しい子達ばっかりなのだから! 新橋の雰囲気と大学の雰囲気が似てるわけがない。
けれども、有難いことに、私は本当に人に恵まれた。上述では、あたかも一人で勉強してきたような書きっぷりだが、実際には、答案を書いたら毎回、読んでくれた人、追試のときに、3日間で成績を引き上げるサポートをしてくれた人、愚痴を聞いてくれた人、私に興味をもって、話しかけてくれた人、等々、彼らがいなければ、私の進級はなかったと断言できる。
人間関係は、努力だけではなんともならないとは思うけれど、ロー生活でいかに勉強し、前に進んでいくかは、友達の力はやはり、大きいと思う。
そして、法学部出身でもなければ予備校にも通ったことのない私は、ローにでも入らなかったら、あんなに魅力的な人達にも出会わなかったんだと思うと、それはそれで面白いと思う。
そんなこんなで、1年はあっという間に過ぎ去り、今は、箱根駅伝で言えば第7区あたりまできちゃっているのである。
次回は、ローで勉強して良かったと思うこと、成績をいかにあげるか、体調を崩してしまったときにいかに乗り越えたか、等々、2年生になってから感じたこと、気付いたこと、経験したことをお伝えしようと思います。(予定)
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