2009年1月6日 ●ロー入学までに何をするか2
お正月も明け、4月からの法科大学院入学に向け、そろそろ始動......といった皆さんも多いことでしょう。法科大学院から勧められるままに、課題図書を読みこなし、司法予備校の法律入門講座を、とりあえず勉強するだけでいいのか? そんな疑問を持たれた方は、学習センスがあります。法律家の素養は、当たり前のことに疑問を持つ姿勢です。
法科大学院入学後の「わからない」は、「知識が足りない」と「勉強方法がわからない」に大別できます。法科大学院指定の教科書が、自分に合っている保障もありませんし、そもそも学者である先生には、初学者の悩みはわかりません。法学部卒の学生に、お薦めの本を聞いても、「学部でたまたま教科書だったから」という回答が案外多いものです。前者の知識不足は、勉強量である程度解決できますが、後者の勉強方法に関しては、個人差があり、他人の方法論がまったく性に合わないことも結構多く、それは書籍選びにもあてはまります。
例えば、憲法。基本書として『芦部憲法』『憲法TU(野中他いわゆる4人組)』などの通読を推奨されていることでしょう。もちろん基本書は大切ですが、純粋未修者は、せっかくなので、これまで培ってきた小論文の学習経験を生かしたいものです。そこで、条文や項目による整理中心の法律基本書だけでなく、全体像がわかる書籍や時間軸(歴史)で整理された書籍の一読をお勧めします。
法科大学院の授業では、ひとつのテーマ(例えば、「表現の自由」)について、争点や条文解釈、判例を念入りに学習しますが、その時代の社会背景や歴史的な推移については手薄で、知識の蓄積も断片的になりがちです。なぜ、そのような事件が発生し、なぜ、裁判所がそのような判断を下したかは、おおいにその時代の社会状況が反映されます。どの科目もそうですが、特に憲法は、『全体像』と『時間軸』を意識すると、格段に興味や吸収量がかわってきます。雑学的な要素も交えながら、まずは、楽しみながら大局的な視点で、憲法を眺めてみてはいかがでしょうか。
次に、私が実際に読んで役立った本をあげてみます。基本書の前に『★★超入門書(前提書)』、『★入門書』というカテゴリーを設けてみましたので、純粋未修者や憲法が苦手の方は、ぜひ参考にしてみてください。もちろんこれから、ロースクール入試に挑む方にも、絶対お薦めです。他に「こんな本もいい」という方がいましたら、是非お知らせください。
office@vocabow.com
★★超入門書(前提書)
・杉原恭雄『憲法読本』岩波ジュニア新書(1994)
→児童向けですが、内容充実。
・鎌田彗『人権読本』岩波ジュニア新書(2001)
→児童向けですが、内容充実。
・『政治経済資料2008』とうほう(2008)
→高校の政治・経済資料集。人権・統治の全体像把握に最適。2009年版(最新版)が出ていればそちらの参照を。
・『ニュース解説室へようこそ2008』清水書院(2008)
→公務員・マスコミ受験用。人権・統治の全体像把握にやはり最適。これも2009年版(最新版)が出ていればそちらを参照。
・『一冊でわかる イラストでわかる図解世界史』成美堂出版(2006)
→各国(フランス・イギリス・アメリカ・ドイツ等)の民主主義誕生の歴史的・社会的背景を知るのに最適。
・『一冊でわかる イラストでわかる図解日本史』成美堂出版(2006)
→明治以降の日本近代史と憲法・社会情勢・政治の関連性を知るのに最適。
★入門書
・田中二郎他『戦後政治裁判史録1〜5』第一法規出版(1980)
・野村二郎『日本の裁判史を読む事典』自由国民社(2004)
・樋口陽一『個人と国家;今なぜ立憲主義か』集英社新書(2000)
・長谷川正安『日本の憲法』岩波新書(2000)
・石川真澄『戦後政治史』岩波新書(2004)
・飯尾潤『日本の統治構造』中公新書(2007)
・日笠完治『憲法がわかった』法学書院(2003)
・宮本剛志『公務員試験これでわかる!憲法』日本評論社(2008)
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