19年 九州大学法科大学院 未修  合格再現 Sさん

 九州大学法科大学院の再現答案です。
完璧に再現できたかどうかはわかりませんが、試験当日を思い出しながら作成したので、皆さんの参考になればうれしいです。
九州大学の問題は、例年、4〜6問と問題数が多いのが特徴ですが、文字数は200〜600字程度と多くありません。
吉岡先生から600字程度であれば文字数を稼ぐことなく、書ききれるということを教えていただいていたので、そのような意識で答案作成したつもりです。
最後に私の回答の課題は、自説に対する批判意見に対応できる内容になっていない点ではないかと思います(問4)。
この点は、吉岡先生が講義で何度もおっしゃていたことなので、一番の反省点です。



【問1


 福祉国家とは、経済発展や軍事増強などの政策よりも社会福祉政策に重きを置いた国家のことである。例えば、北欧のスウェーデンは福祉国家として有名で、国民の教育費や医療費は基本的に無料だ。ただし、このような社会福祉の財源は国民が税金で負担しているので、一般的に福祉国家における税金は高額だ。もし、政治家の無能や腐敗によってその財源が枯渇すれば、国家は増税を行なって、その財源を確保しなければならない。
(196文字)

【問2


 代表制民主主義の下では、国家として国民全体の福利のためにどうしても必要な政策であっても、有権者に不人気なものであるならば政治家は選挙で敗北してしまい、そのような政策を実現することができなくなる。このような、従来の民主主義の機能不全に対する解決策として、テクノクラート的な非多数機関により運営されるEUが誕生した。加盟国の政治家達は、EUという装置を活用することにより、自国民に不人気な政策でも実現できるようになり、かつ、その責任をEUに押し付けることができるようになった。
 EU誕生の背景には、政治エリート自身が民衆から信頼を受けていることに基づく「許容のコンセンサス」が存在したが、その後、信頼と支持が揺らぎ、民衆とエリートが乖離するにつれ、エリート主導の欧州統合プロジェクトは脆弱化することとなった。この結果、欧州ポピュリズムの勢力が、欧州統合問題をエリートに対する攻撃手段として用いるようになり、欧州ポピュリズムが台頭する状況が整った。
 EUにおける最大の問題は、EUという政体内に野党を組織する権利が欧州市民に与えられていないことである。つまり、欧州各国のポピュリスト政党はEUに対する人々の不満と懐疑の受け皿として登場したのだ。
 すなわち、各加盟国における代表制民主主義の機能不全に対する解決策として登場したEUが、欧州のポピュリズムをもたらしたことが、筆者のいう「欧州統合のパラドクス」である。(600文字)

【問3

 EU加盟国の国内政治が非政治化したことが、筆者のいう「空洞化」である。空洞化が生じた理由の第一は、EUの政策範囲拡張に伴って、EUが広範に各国法を調和するようになり加盟国の権限が減少したこと、第二は、各国レベルからEUレベルに政策決定が委任されたことにより、各国政府や政党の能力が制限され、政党政治が排除される結果となったためである。その結果、加盟国の国内政治は非政治化し、「空洞化」が生じた。
(197文字)