17年 東京大学法科大学院 未修  合格再現 Tさん

おかげさまで、東大の法科大学院に合格しました。
本番の問題は難しく何を書いてよいか途方に暮れたのですが、これまでの授業を思い出しながら、悔いが残らないよう書きまくって終われたのが良かったのかもしれません。
面接ではステートメントに関して一切質問がなく、指導いただいたおかげで分かり易かったのかなと思っています。

「合格再現答案」コメント

内容についてはご指導いただいたにも関わらず、お恥ずかしい限りです。問1の(3)で具体例を求められましたが、まったく思い浮かばす呆然としました。しかしボカボの授業で取り上げられ頭に残っている例を片端から問題主旨にあてはめ、強引にでも例示したことで、なんとか字数を埋めることができました(とはいえあまり良い具体例ではないのですが)。2問目は時間がなく、再現も上手く出来ていないのですが、このような主旨で書いたつもりです。面接再現も書いてみました。
これから受験する方の参考になればうれしいです。


【第1
(1)
激しい変化とは、それまでの権力政治のみの政治から、権力政治の否定がおこったことである。それまでは力と利益を基本原則にした権力政治を基本として国際政治がおこなわれてきた。しかしソ連とアメリカが権力政治を否定し、イデオロギーを元にした政治を唱え、そこに新しい国際政治の状況が生み出された。さらに、その平和というイデオロギーのもとに新しい国際政治が語られても、権力闘争がなくなったわけではないという複雑な状況が激しい変化である。
(2)
「ずれ」とは、実際の国際政治は、国内政治と同様に複雑怪奇なものなのに、単純で抽象化されたものであるという想定のもとに国際政治を認識し判断することから生じる違いである。明治時代の政治家たちは国際社会も複雑な権力政治であることを認識していた。なぜ以後の政治家にこの認識ができなかったのかの理由は、国際政治の激しい変化が原因である。これまでの分かり易い権力闘争としての国際政治が、平和というイデオロギーの名の下に政治がおこなわれることで、権力闘争としての面が多くの政治家に十分に認識されなかったのだ。事象を正しく捉える想定をもたず単純で抽象化されたものとして想定することで、現実とのずれが生じるのである。

(3)
例として原発の再稼働に関する問題が挙げられる。単純な図式で割り切れば、原発は日本経済が発展するためには必要であり、十分な管理をおこなえば大災害は防げると想定できる。一方で原発を取り巻く現実は複雑怪奇と考えれば、天災の規模と時期を予測することは難しく人為的なミスも完璧には管理できないのだから、再稼働はあきらめるべきだとも考えられる。
このような構図となる理由は、原発事故が実際に起きる可能性は低いのに、発生した場合のリスクが大きすぎることにある。事故発生の可能性は低いのだから単純な図式で明るい将来のための施策をとるべきなのだが、もし事故が発生した場合のリスクは大きく複雑怪奇な問題も無視できないのだ。

【第2
(1)
個人は自由に行動する権利があると考えれば、挙げられているすべて内容について自由に行動することができる。
しかし、自由も全てが許容されるわけではなく、他人に迷惑をかけない範囲でのみ許容されると考えれば、公然と性交渉をする自由は制限されるだろう。そのような行為を見ることで不快に思う人が存在することが想定されるからだ。
さらに社会生活や一般の人々に対して不安を感じさせる行為も、社会として制限すべきであるという立場を取れば、ブルカやヘアファッションの自由に対する制限も追加されるであろう。
(2)
いやがる人にパフォーマンスを見せることは、その人の自由で健全な生活を侵す行為であり許されない。そのような行為は同性愛を差別することと同様に、他人が平穏な生活を送る自由を奪う行為である。
さらに、キスをパフォーマンスに使うことは許されるべきではない。キスなどの行為は神聖な行為であり、抗議のパフォーマンスなどに使われるべきではない。

【面接試験】
・法曹の志望動機、なぜ東大のロースクールなのかなどは一切聞かれずに、いきなり本題の質問にはいりました。面接官は2名。

・「裁判員制度は知っているか」→知っている。(と答えましたが、一般的な説明はしてくれました。)

・「裁判員制度で、死刑事件も市民に裁かせることに議論が出ている。それについてどう思うか」→死刑判決は裁かせるべきではない。今後の人生でトラウマになる。重すぎる責任を負わされている。特に若い人にはショックが大きく年齢制限を付けるべき。

・「ではその意見に対してどのような反論が予想されるか。」→だれかが裁かなくてはならない。死刑という難しい判断こそ国民の代表である裁判員制度に託している。重い責任だが、コミュニティの一員として果たさなければならない責任である。

・「なぜ裁判員制度を導入すると思うか」→職業裁判官だけでは市民感覚が吸い上げられないから。

・「裁かれる側の立場ならどう思うか」→職業裁判官の方が良いのでは。裁判員では感情のままに死刑判決を出しそうで怖い。