16年 東亜大学大学院 法学専攻  合格再現 Sさん


 2016年度、東亜大学大学院の合格再現答案を書いてみました。ボカボでは小論文の書き方を初歩から教わりました。その結果としてこれだけ書けるようになったと思います。ありがとうございました。これから受験する方の参考になればいいと思います。


 

【問1】
 会社法433条第1項の請求を行える株主は、@、D、Eである。@の株主Aは議決権のある株式300株を有しており、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主に該当し、会社法433条第1項の請求を行える。Dの株主Eは、議決権のある株式150株と議決権のない株式300株をあわせて450株有しており、発行済株式の100分の3以上の株式を有する株主に該当し、会社法433条第1項の請求を行える。Eの株主Fは議決権のない株式450株を有しており、発行済株式の100分の3以上の株式を有する株主に該当し会社法433条第1項の請求を行える。

【問2】
(a)-A
 反社会的勢力である株主からの請求は、会社法433条第2項二号の会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的に該当し、閲覧請求を拒絶できる。
 (b)-C
 信用調査会社に経営情報を提供して報酬を得ようと考えている株主からの請求は、会社法433条第2項四号の利益を得て第三者に通報するための請求に該当し、閲覧請求を拒絶できる。
(c)-A
 会社から追い出された前社長である株主が、自分を追い出した現経営陣が何か不祥事をしていないかあら探しをするために行う請求は、会社法433条第2項二号の会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的に該当し、閲覧請求を拒絶できる。
【問3】
 請求者が実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであっても、共同で事業を行う場合もある。会社内で粉飾決算などの不正が疑われる場合に、実質的に競争関係にある事業を営んでいるという理由で、会計帳簿を調査する機会を与えられなければ、会社の不正を明らかにし、これを糺す機会を失うことになる。また、会社の不正を調査することは、株主としての権利の実現に必要不可欠であり、帳簿閲覧権を株主に認めた意義が損なわれる。
【問4】

 会社法433条2項第三号の解釈については、主観的要件必要説が妥当である。なぜなら、会社の不正を調査することは株主の権利の実現に不可欠であり、会社の損失が実質的に帰属する株主が、たまたま競争関係にあるというだけで、会社の不正が疑われる場合に帳簿閲覧権を奪われることは不当だからだ。たしかに、実質的に競争関係にある事業を営む株主が、真に会社の不祥事について調査する目的で帳簿閲覧請求を行ったとしても、その後に請求者が、会計帳簿を閲覧して知った会社の内部情報を悪用するおそれもある。会計帳簿には、日々の取引の履歴が記載されており、取引先、仕入価額、利益率など多くの企業秘密が会計帳簿から読み取れることから、第三者が理由もなく株式会社の会計帳簿を見ることは出来ない。また、会社法第433条2項に該当する一定の株主からの閲覧請求を、会社が拒絶できることは、会社の業務の遂行と、株主の共同の利益を守るためにも不可欠である。例えば建設業で、実質的に競争関係にある株主が権利の行使により知り得た事実を自らの事業に利用し、入札など競合する取引を有利に行うことで会社の業務の遂行を妨げる可能性もある。そのため会社法第433条2項三号により閲覧請求を拒否できるものとしている。しかし、会社が粉飾決算を行っているなどの不正が疑われる場合に、株主としての権利を行使できなければ、株式を売却して損失を回避するなど、純粋な株主として損失を回避する機会を失いかねない。そのため、請求者が競争関係にあるという事実が存在するのみでは帳簿閲覧請求を拒否することはできず、請求の時点で、請求者が帳簿閲覧請求権の行使で知り得た情報を自らの事業に利用しようとする具体的な意図を有している場合に、はじめて会社は請求を拒否できる。よって、会社法433条2項第三号の解釈は主観的要件必要説が妥当である。