08年 明治大学法科大学院 合格再現答案 Tさん

私が明治大学の試験で書いた答案を再現してみました。

明治大学未修の本年度小論文問題は、水質汚濁法の現条文を参考に、環境損害に関する新しい法律条文を書かせるという問題でした。
私の場合は職業柄、なんとか対応できましたが、通常の小論文アプローチでは厳しい部分もあるのではないかと思いましたので、皆さんの参考になればと思い、公開いたします。

試験感想
・時間配分(課題文と別添資料読み込み30分、答案構成30分、答案作成60分)
・改善命令に対し不服のある者に対する聴聞や異議申し立てに関する事項の必要性はわかっていたが、時間がなかったので書くことができなかった。
・工場および事業場以外のものが環境損害をおこした場合について言及できなかった。
・試験時間の最後30分は、ひたすら題意の要求する部分をそのまま繰り返し書くことになってしまった。(第二十条の十〜十二)


問題
与えられた水質汚濁防止法の条文をもとに、環境自体の保護を目的とする水質汚濁防止法の改正案を作成する。(課題文2p、別添資料9p)

再現答案
第四章の二 環境損害
(目的)
第二十条の六
この章は、工場および事業場から公共用水域に排出される水の排出および地下に浸透する
水が、環境自体に与える影響に対して環境自体に対する損害(環境損害)の発生防止と、これが生じた場合の事業者の損害賠償の責任について定めることにより環境全体の保護を図ることを目的とする。
(定義)
第二十条の七
この法律において「環境」とは、「水域関連の生態系(交互作用を伴う、生物および無生物だが生物学的に作用する、構成要素の総体で形作られる資源)」をいう。
2.この法律において「環境損害」とは、「公共用水域における生態系に対する重大な悪影響(その内容)」をいう。
(環境損害基準)
第二十条の八
環境損害基準は、公共用水域における生態系の損害状態について環境省命令で定める。
2.都道府県は、当該都道府県の区域に属する公共用水域のうちに、その自然的、社会的条件からして、第一項の環境損害基準によっては人の健康を害し、又は生活環境を保全することが十分でないと認められる区域があるときは、その区域に排出される排出水の汚染状態について、政令で定める基準に従い、条例で同項の排水基準にかえて適用すべき同項の排水基準で定める許容限度より厳しい許容限度を定める排水基準を定めることができる。
3.前項の条例においては、当該区域の範囲を明らかにするものとする。
4.本法律の施行以前から存在する各都道府県の工場および事業所は、各都道府県に環境損害の程度に関して届けることを義務づけ、各都道府県はその内容を登録するものとする。
5.本法律施行後に新設される各都道府県の工場および事業所は公共用水域への環境損害に関する予測を都道府県に提出する義務を負い、各都道府県はその内容を登録するものとする。
6.環境損害基準の程度を測るために、公共用水域への水の排出および地下水への浸透の程度に関して、定期的な観測を都道府県は行うものとする。
7.環境損害基準を測るための調査は、都道府県自らが作成するか、都道府県が認可した第三者機関に依頼し、環境損害の報告書を作成することができるものとする。
8.環境損害基準に関する調査報告書を都道府県は少なくとも年1回作成し、公表しなければならない。
9.前項の環境損害の報告書に基づき、環境損害を認定する。
10.環境損害認定の基準は環境省令で定めるものとする。
(環境損害防止計画)
第二十条の九
都道府県知事は、指定区域にあっては、前条の環境損害基準の削減を達成するための計画(以下「環境損害削減計画」という)を定めなければならない。
2.環境損害削減計画においては次の各号に掲げる事項を定めるものとする
一 発生源別の環境損害の削減目標量
二 前号の削減目標量の達成の方途
三 その他環境損害削減に関し必要な事項
3.都道府県知事は、環境基準損害削減計画を定めようとするときは、関係市長村の意見を聴くとともに、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。
4.環境大臣は、前項の同意をしようとするときは環境損害対策会議の議を経なければならない。
5.都道府県知事は、環境損害削減計画を定めたときは、その内容を公告しなければならない。
6.前三項の規定は、環境損害削減計画の変更について準用する。
(環境損害が生じるおそれのある場合)
第二十条の十
環境損害が生じるおそれがある場合には、都道府県知事は、環境損害のおそれの原因を生じさせた者に対して損害発生を防止するために必要な措置を命ずることができる。
2.環境損害が生じるおそれがある場合で、緊急を要するときは、都道府県知事が自ら必要と認める措置を実施し、または第三者に実施させることができる。
3.前項において、都道府県知事が自ら必要と認める措置を実施し、または第三者に実施させた場合、その措置に要した費用を義務者に請求できることとし、この請求権については国税滞納処分の場合と同様の方法で徴収でき、かつ国税および地方税につぐ順位の先取特権を有するものとする。
(環境損害が生じた場合)
第二十条の十一
環境損害が生じた場合には、都道府県知事は、環境損害を生じさせた者に対して、原状回復、代償措置その他必要と認める措置を命ずることができるものとする。
2.前項の措置を実施することができないときは、その措置命令にかえて、一定の金額の納付を命ずることができ、納付された金額の使途を公共用水域または地下水の浄化その他の水域に関連する環境保護の目的に限ることとする。
3.環境損害が生じた場合で、緊急を要するときは、都道府県知事が自ら必要と認める措置を実施し、または第三者に実施させることができる。
4.前項において、都道府県知事が自ら必要と認める措置を実施し、または第三者に実施させた場合、その措置に要した費用を義務者に請求できることとし、この請求権については国税滞納処分の場合と同様の方法で徴収でき、かつ国税および地方税につぐ順位の先取特権を有するものとする。
(環境損害の改善命令)
第二十条の十二
前二条に規定する状況が生じたにもかかわらず、合理的理由もないままに、都道府県知事が必要な命令を行わない場合には、だれでも都道府県知事に対してその命令の発動を請求できることとする。

附則
(施行日)
1 本改正の施行日は政令で定めることとする。
(適用)
2 改正法は責任原因が施行後の行為によって生じた場合に適用することとする。